トランプ氏「自賛」目立った議会演説 分断解消や外交構想に言及なし


【写真】トランプ氏演説中にブーイング…退場させられる議員

 今回の施政方針演説は、内政、外交、経済などの現況と基本方針を説明する一般教書演説に準じるもので、約1時間40分に及んだ。就任直後の大統領は、幅広く政権構想を訴えるのが通例だが、トランプ氏は就任から約1カ月半で出した「100件近い大統領令」による政策転換のアピールに力点を置いた。

 トランプ氏は冒頭で「就任後43日間で、多くの政権が4年も8年もかかることより、多くのことを成し遂げた。しかも、まだ始まったばかりだ」と自賛。2024年の大統領選で得た国民の「負託」に基づいて、「常識による革命」に取り組んでいると説明した。

 自身が選挙で最大の争点に位置づけた不法移民対策では「不法越境者数は記録的な低水準になった。(不法移民に厳しい)私の言葉を聞いて、米国に来ないことを選んだのだ」と強調した。

 また「税金の無駄遣いを終わらせる」と強調し、傍聴席にいた「政府効率化省」トップで実業家のイーロン・マスク氏の仕事ぶりを称賛。さらに「多様性、公平性、包摂性(DEI)の圧政を終わらせた。雇用や昇進は技術や能力によるべきで、人種や性別に基づくべきではない」と主張した。

 経済面では、4月2日に相手国と同水準の関税を課す「相互関税」を導入する方針を改めて示した。関税引き上げによって物価高(インフレ)を招くとの懸念があるが、トランプ氏は「関税の負担を避けたい外国企業が米国に進出してくる」との持論を展開。中国が米国産農産物に報復関税を課したことを懸念する農家に対しては、「外国からの農産物は関税引き上げによって高くなるため、米国の農家の国内市場での競争力が上がる」と訴えた。

 外交・安全保障では「ゴールデンドーム(黄金の円天井)」と称する最先端のミサイル防衛体制の構築に意欲を示し、議会に関連予算を求めた。海運の要衝であるパナマ運河の管理権や、デンマーク領グリーンランドの獲得にも改めて意欲を示した。ただ、包括的な対中国政策や、北朝鮮やイランの核開発への対応に関する説明はなかった。

 トランプ氏は選挙戦では「分断の癒やし」「国民の結束」の重要性を強調したこともあった。しかし、就任演説に続き、今回の議会演説でも、民主党やリベラル派との対決色を前面に出した。民主党議員の一部はトランプ氏の独善的な政権運営に抗議して合同会議を欠席。出席した議員も演説中に「ウソつき」と書かれたプラカードを掲げるなど、党派対立が如実に表れた。【ワシントン秋山信一】



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