疾走する米中…遅れとるドイツ経済 「壁」崩壊30年





9日、記念式典で市民らと握手するドイツのメルケル首相=ベルリン(ロイター=共同)

 【パリ=三井美奈】30年前のベルリンの壁崩壊後、当時の西ドイツ経済は1年足らずで東ドイツを吸収し、再統合を進めるほど強力だった。ところが今年、ドイツは景気後退の瀬戸際に立つ。欧州連合(EU)最強の経済大国は、技術革新で米中に後れをとっている。

GAFA、EV競争…追う立場

 欧州委員会の7日の発表で、ドイツの今年の成長率見通しは0・4%。2年前まで2%超の安定成長でEU経済を牽引(けんいん)したのに、今は足を引っ張る存在だ。7~9月期は、2四半期連続でマイナス成長となる懸念もくすぶっている。

 ショルツ財務相は、米中貿易摩擦などで世界経済が不透明になったのが原因だと訴えた。独経済は自動車や機械輸出が支え。特に中国は最大の貿易相手国だ。

 しかし、より深刻なのは中国がハイテク産業で力をつけたこと。米IT大手「GAFA」に対してもそうだがドイツは「追う立場」に立たされる。特に電気自動車(EV)開発競争では遅れが著しい。

 旧東独テューリンゲン州では先月、中国のEV用電池大手「寧徳時代新能源科技」(CATL)が新工場建設を始めた。海外初の拠点に、自動車大国ドイツを選んだ。一方、ダイムラー、フォルクスワーゲン(VW)、BMWといった独大手は当面、CATLに依存せざるを得ない。「中独」逆転を象徴する。

 米国も自動運転の開発が進み、独誌シュピーゲルは「テスラやグーグルはドイツ自動車産業をつぶすのか」と悲鳴をあげた。VWは4年前に発覚した排ガス規制逃れでトップが起訴されるなど、余波が続く。

「奇跡の成長」今や昔日に

 金融界も不安がある。国内の銀行最大手、ドイツ銀行の経営不安が顕著で、今年7~9月期は最終損失が8億3200万ユーロ(約1千億円)と2期連続の赤字。今夏には1万8千人の削減を発表し、ユーロ圏の信用不安の種になった。

 ドイツ統一で、西独マルクに東独マルクは等価交換された。「奇跡の成長」と呼ばれた西独の経済力が可能にした。そのドイツ株式会社の本丸はいま、国際競争の荒波に襲われている。



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