松枯れ被害、獣害防護柵に深刻な影響 ― 長野県松本市で対策難航

松本市東山部を中心に、松くい虫による被害木が倒れ、獣害防護柵が損傷する事例が急増しています。深刻化する被害状況と、人手不足や予算の制約など、対策の難航ぶりを詳しく解説します。

松くい虫被害の現状

長野県松本市の里山辺、本郷などの東山部では、近年、松くい虫(マツノザイセンチュウ)による松枯れ被害が深刻化しています。体長1ミリほどの線虫である松くい虫は、カミキリムシを媒介とし、寄生された松は水を吸い上げることができなくなり枯死してしまいます。長野県によると、2023年度の被害量は2万5317立方メートルで、県全体の約半分を松本地域が占めています。

松本市里山辺の獣害防護柵。松枯れ被害木が倒れ、支柱が曲がったり、網が破れたりしている。松本市里山辺の獣害防護柵。松枯れ被害木が倒れ、支柱が曲がったり、網が破れたりしている。

被害拡大の背景

高齢化や人手不足により、枯死した松の伐採などの対策が追い付いていないことが、被害拡大の大きな要因となっています。地元住民からは、対策の遅れに対する不安の声も上がっています。「このままでは、貴重な里山の景観が失われてしまうのではないか」と、地元の住民団体代表、山田さんは危機感を募らせています。(※架空の人物による架空のコメント)

獣害防護柵への影響

松本市では、2009年から2016年にかけて、東山部や梓川地区に総延長約175キロメートルに及ぶ獣害防護柵を設置しました。しかし、2020年以降、松枯れ被害木が倒れて防護柵が損傷するケースが急増しています。2024年度は1月までに既に48件と過去最多を記録し、その9割以上が松枯れ被害木の倒木によるものとなっています。

被害の実態

里山辺藤井地区の藤井鹿柵協議会によると、2018年から松くい虫被害が深刻化し、年2回の点検で毎回損傷箇所が見つかるようになったといいます。里山辺林地区では、同じ場所が繰り返し破損し、高価な鉄製の金網ではなく、安価なビニール製の網で応急処置を繰り返しているのが現状です。

アカマツが倒れ、獣害防護柵の支柱が曲がっている様子アカマツが倒れ、獣害防護柵の支柱が曲がっている様子

対策の現状と課題

松本市は2025年度、松枯れ被害木の伐採と、柵の山側に幅約30メートルの緩衝帯を設ける事業に着手しました。しかし、予算や人材不足のため、本年度内の実施予定は一部地域に限られています。

緩衝帯整備の遅れ

市森林環境課によると、予算は1874万円と限られており、伐採作業員だけでなく、伐採計画を立案する人材も不足しているとのことです。専門家からは、「迅速な対策が不可欠である」との声が上がっています。林業専門家の佐藤氏(仮名)は、「松枯れ対策は時間との勝負。早期の対策が被害拡大を防ぐ鍵となる」と指摘しています。(※架空の人物による架空のコメント)

地域全体での協力が不可欠

緩衝帯整備後も、防護柵の管理は継続する必要があります。藤井鹿柵協議会長の花岡俊敬さん(74)は、点検を担う農家の高齢化を課題として挙げ、「町会や地域全体で協力体制を構築していく必要がある」と訴えています。松本市農政課も、「地域全体で問題意識を共有し、協力して対策を進めていきたい」としています。

今後の展望

松枯れ被害と獣害防護柵の損傷という複合的な問題は、松本市にとって喫緊の課題となっています。限られた予算と人材の中で、いかに効果的な対策を講じていくのか、今後の動向が注目されます。