石破内閣に訪れた“天祐”:不信任案断念と小泉農水相起用の影響

参議院選挙を目前に控え、石破内閣に予期せぬ追い風が吹いています。永田町関係者の間では、この状況が政権運営に新たな展望をもたらすとの見方が強まっています。この注目の政治情勢について、月刊文藝春秋の著名な政治コラム「赤坂太郎」から得られた情報をもとに詳細をお伝えします。

国会閉幕と総理の心境変化

150日間に及ぶ通常国会が事実上閉幕した2025年6月20日、石破茂総理大臣は異例とも言える上機嫌でした。その理由は、立憲民主党の野田佳彦代表が内閣不信任決議案の提出を断念したことにありました。石破総理は、「野田さんが立派だということですよ。総理経験者として非常に常識的な判断をしてくれた」と、その判断を高く評価しました。野党が連携して不信任案を提出した場合、可決の可能性が常に存在し、国会開会中の不安定要因となっていました。この最大の懸念材料が解消されたことは、石破総理にとって大きな安心材料となったのです。

さらに、懸念されていた自民党内での「石破おろし」の動きも見られませんでした。これにより、7月の参議院選挙を乗り越えることができれば、長期政権への道筋が見えてくるとの期待が高まっています。石破総理は満面の笑みを隠さず、「今年度予算は3月中に成立、内閣提出法案の成立率は98%、不信任案は出ない。少数与党としてこれ以上はない。参院選でも、与党過半数にどれだけ上積みできるかだね」と、自信をのぞかせました。わずか1カ月前には、低迷する内閣支持率に苦しみ、「もうやってらんない」「馬鹿馬鹿しい」などと周囲に漏らしていたのが嘘のようです。

2025年6月20日、国会内で立憲民主党の野田佳彦代表と挨拶する石破茂総理。不信任案断念の決定を伝えた場面と見られる。2025年6月20日、国会内で立憲民主党の野田佳彦代表と挨拶する石破茂総理。不信任案断念の決定を伝えた場面と見られる。

農水大臣交代がもたらした転機

この政権を取り巻く状況が大きく好転したきっかけは、当時の農林水産大臣だった江藤拓氏の「コメは買ったことがない」という不用意な一言でした。この発言が大きな批判を呼び、石破総理は江藤氏の更迭を余儀なくされました。その後任として、苦肉の策とも言われた小泉進次郎氏の抜擢が、結果として政権を取り巻く風景を一変させることになります。

“ケガの功名”と農政への意欲

突然訪れたこの幸運を、石破総理は「まさに“ケガの功名”というやつですな。備蓄米ブームとでも言いますかね」と冗談めかして表現しました。以前は野党の要求に追われる立場でしたが、小泉氏の農水大臣就任後は、周囲に対して意欲的に農政の未来について語り始めました。「小泉さんをフォローして農政改革をやり切らなければなりません。大規模化、効率化を進め、コメを増産し、コストも下げて輸出も増やす。これは自給率の向上にもつながるし、食料安全保障にもなる」と述べ、具体的な政策目標にも言及しました。この発言からは、単なる危機回避にとどまらず、ポジティブな政策推進への姿勢が読み取れます。

高まる支持率と解散への言及

一連の出来事を経て、石破内閣の支持率は明らかに上昇に転じ始めています。政権の勢いが戻りつつある中で、石破総理は内閣不信任案が出された場合の対応についても強気な姿勢を示しました。「不信任案が出れば、すぐに解散しますよ。当然のことです」と明言し、もしもの場合の選択肢についても臆することなく語りました。

これらの動きは、参議院選挙を控えた石破内閣にとって、予期せぬ「天祐」となり、政権運営に新たな展望をもたらしていると言えるでしょう。

参考資料

  • 赤坂 太郎「W選挙に怯み不信任案を捨てた野田」月刊文藝春秋 2025年8月号
  • 文藝春秋PLUS(文藝春秋 2025年8月号 掲載記事)