「9日間の女王」ジェーン・グレイ、幻の肖像画発見か?レストパークで公開中!

イングランドの歴史に名を刻む悲劇の女王、ジェーン・グレイ。わずか9日間でその座を追われた彼女の、生前に描かれた唯一の肖像画が発見された可能性が浮上し、話題を呼んでいます。今回は、その謎多き肖像画と、ジェーン・グレイの波乱万丈な人生について迫ります。

謎めいた肖像画、その正体は?

現在、イングランド東部ベッドフォードシャー州のレストパークで展示されているこの肖像画。白い帽子とショールをまとった若い女性が描かれており、1701年に第11代ケント伯爵アンソニー・グレイがジェーン・グレイの肖像として入手したとされています。長らく「決定的肖像」とされてきましたが、21世紀に入り美術史家から疑問の声が上がっていました。

レストパークで展示されている肖像画レストパークで展示されている肖像画

最新技術で明かされる真実

真偽を確かめるべく、イングリッシュ・ヘリテージはコートールド美術研究所や年輪年代学の専門家と協力し、徹底的な調査を実施。年輪年代法を用いた分析の結果、絵画に使用された板は1539~71年頃に作られたバルティックオーク材であることが判明しました。これはジェーン・グレイの生存期間と一致する重要な手がかりです。

赤外線反射法が暴く修正の痕跡

さらに、赤外線反射法を用いたスキャンによって、肖像画には数々の修正が加えられていたことが判明。肩の白いスカーフは後から描き加えられたものと考えられ、右腕のバンドも当初は大きな装飾袖の一部だった可能性が示唆されています。髪を覆うリネンの帽子(コイフ)も、当初は異なる形状だったことが分かりました。専門家の中には、ベールが描かれていた後に塗り消された可能性を指摘する声も。

スキャンで明らかになった当初の肖像画スキャンで明らかになった当初の肖像画

意図的な損傷の謎

また、ジェーンの目や口、耳の部分には引っかき傷が見られ、宗教的もしくは政治的な理由で意図的に損傷された可能性が考えられています。同様の傷は、ナショナル・ポートレート・ギャラリーに所蔵されているジェーンの死後に描かれた肖像画にも確認されています。

慎ましいプロテスタントの殉教者へ

一連の修正は、ジェーンを慎み深いプロテスタントの殉教者として描くために加えられた可能性があるとイングリッシュ・ヘリテージは推測しています。当初はより豪華な衣装を身につけた女王らしい姿が描かれていたのかもしれません。

ジェーン・グレイ、波乱の生涯

1537年に生まれたジェーン・グレイは、熱心なプロテスタントでした。1553年、エドワード6世の死後、イングランドの宗教改革を支持する勢力によって女王に擁立されますが、わずか9日後にメアリー1世に王位を奪われ、大逆罪で処刑されました。享年16歳。

権力闘争の犠牲者

ジェーンの短い治世は、宗教改革期のイングランドにおける権力闘争の激しさを物語っています。若くして非業の死を遂げた彼女の運命は、後世の人々に深い悲しみと感銘を与え続けています。

真実はまだベールに包まれている

イングリッシュ・ヘリテージのレイチェル・ターンブル氏は、「絶対にジェーン・グレイだと断定はできない」としながらも、「私たちの分析結果に説得力があるのは間違いない」と語っています。レストパークで展示されているこの肖像画。はたして本当に「9日間の女王」の姿なのでしょうか?今後の研究に期待が高まります。