ゼレンスキー大統領の窮地:トランプ前大統領との確執とウクライナ大統領選の行方

ウクライナ侵攻から3年、ゼレンスキー大統領は戦況だけでなく、思わぬ形で自身の政治生命を脅かされています。なんと、ドナルド・トランプ前米大統領から「選挙をしない独裁者」と批判を浴びているのです。本記事では、この二人の確執の背景、ウクライナ大統領選の可能性、そして国民的人気を誇るザルジニー氏の動向について深く掘り下げます。

トランプ前大統領の批判の真意とは?

発端は、ゼレンスキー大統領がウクライナの鉱物資源権益の一部を米国に譲渡する合意文書への署名を拒否したことでした。これを機に、トランプ前大統領はゼレンスキー大統領を「独裁者」「ひどい仕事しかしていない」と痛烈に批判。ウクライナ侵攻開始の責任まで追及する姿勢を見せています。

ゼレンスキー大統領ゼレンスキー大統領

ウクルインフォルム編集者の平野高志氏によると、鉱物資源の共同開発は元々ウクライナ側の提案でしたが、ロシアの再侵攻を防ぐための安全保障と支援が前提条件でした。トランプ前大統領が過去の支援の見返りに権益を要求したため、ゼレンスキー大統領は当然のように拒否したのです。

しかし、早期停戦を公約に掲げ、ノーベル平和賞受賞も視野に入れているトランプ前大統領にとって、ゼレンスキー大統領の態度は自身の「レガシー」構築を阻む障害でしかありません。

過去の因縁と大統領選への思惑

二人の確執はさらに深いところに根ざしています。2019年、トランプ前大統領の弾劾のきっかけとなったのは、ゼレンスキー大統領との電話内容でした。明海大学の小谷哲男教授は、この一件がトランプ前大統領の個人的な恨みにつながっていると指摘します。

停戦交渉からゼレンスキー大統領を外したいトランプ前大統領は、延期されているウクライナ大統領選の実施を要求。ロシアに同調することも厭わない姿勢で、領土奪還や捕虜の解放といったウクライナ国民の切実な願いは無視されていると小谷教授は分析します。

国民的英雄、ザルジニー氏の存在

しかし、仮に大統領選が実施されたとしても、トランプ前大統領やロシアの思惑通りに進むとは限りません。元軍総司令官で駐英ウクライナ大使のヴァレリー・ザルジニー氏が、ゼレンスキー大統領を凌ぐ圧倒的な支持率を誇っているからです。

ザルジニー氏ザルジニー氏

平野氏によると、ザルジニー氏はヘルソン奪還作戦の指揮などで英雄視され、国民から絶大な人気を誇っています。「鉄の将軍」の異名を持ちながらも憎めないチャーミングな一面も持ち合わせ、作戦が失敗しても世論の批判を浴びにくい存在です。

戦争終結後の大統領選への期待

妻は金融関係の仕事に従事し、娘も軍人というザルジニー氏。軍規に関する論文で博士号を取得し、詩や旅行を趣味とするインテリな一面も。手柄を誇示しない実直な性格から、次期大統領候補として期待する声が高まっています。

しかし、現在のウクライナは戒厳令下であり、法律上大統領選は実施できません。戒厳令を解除すればロシアに付け入る隙を与えることになり、国民も政治的混乱を望んでいません。国益を最優先するザルジニー氏自身も、大統領選への立候補については「戦争が終わった後で」と発言を控えています。

複雑に絡み合うウクライナの未来

トランプ前大統領の批判、大統領選の実施可能性、そしてザルジニー氏の動向。ウクライナの未来は複雑に絡み合った要素によって左右されています。今後の展開から目が離せません。