池袋ガールズバーが強制売春で摘発:大久保公園「立ちんぼ」の闇とホストクラブの影

東京都池袋のガールズバー「イーウェーブモーニング」の経営者が、女性従業員に売春を強要したとして逮捕されました。この事件は、新宿・歌舞伎町の大久保公園周辺で横行する「管理売春」の実態、そしてホストクラブとの複雑な関係を浮き彫りにしています。警視庁による摘発の背景には、経営不振や女性への身体的・精神的搾取という深刻な社会問題が横たわっています。

池袋ガールズバー「イーウェーブモーニング」摘発の経緯

警視庁保安課は10月15日、池袋のガールズバー「イーウェーブモーニング」の店長である鈴木麻央耶容疑者(39)と従業員の田野和彩容疑者(21)を、売春防止法違反(管理売春)の疑いで逮捕しました。両容疑者は今年5月から7月にかけて、女性従業員を店内に寝泊まりさせ、新宿・歌舞伎町の大久保公園周辺で売春をさせた疑いが持たれています。鈴木容疑者は容疑を否認しているものの、田野容疑者は容疑を認めていると報じられています。

被害に遭った女性従業員は、昨年9月に入店したものの、鈴木容疑者から半年間一切給料を支払われず、今年4月には「立ちんぼをするか風俗で働くか選べ」と迫られたといいます。その後、女性は連日、店の営業終了後に大久保公園に立たされ、GPSでの位置情報監視、客との会話の録音、ホテル入室時の部屋番号報告などが義務付けられ、その報酬のほとんどを鈴木容疑者に巻き上げられていました。

さらに深刻なのは、鈴木容疑者が女性の部屋を無断で解約し、店内に住まわせたこと。女性は日常的に行動を監視され、暴力により全身に20ヵ所以上のアザがあったとされます。鈴木容疑者が女性に売春をさせた人数は延べ400人以上、稼いだ約600万円のほとんどを鈴木容疑者が搾取していたものと見られています。この事件は、被害女性が7月に売春防止法違反(客待ち)の疑いで現行犯逮捕されたことをきっかけに発覚しました。逮捕の報道後、田野容疑者の「美しすぎる」容姿がインターネット上で話題となりましたが、事件の背景にある人権侵害の深刻さは見過ごせません。

池袋で摘発されたガールズバー「イーウェーブモーニング」の外観。昼夜二部制で営業していた池袋で摘発されたガールズバー「イーウェーブモーニング」の外観。昼夜二部制で営業していた

経営不振が引き起こした「奴隷化」の実態

事件の舞台となった「イーウェーブモーニング」は、豊島区池袋に位置するガールズバーです。同店は夜20時から朝5時まで営業する「e-wave」の朝昼の部として、朝5時から夜20時まで営業しており、実質的に24時間体制で稼働していました。鈴木容疑者は「イーウェーブモーニング」の店長を務め、田野容疑者はその従業員でした。

同業者の証言によると、鈴木容疑者は夜の部の経営者からテナントと看板を借りて営業する「転貸」方式で商売をしていた模様です。営業していない時間のテナント料を考慮すると、昼間に店舗を貸し出すことは合理的なビジネスモデルに見えます。しかし、取材を進めると、鈴木容疑者が経営していた昼の部は「経営がかんばしくなかった」ことが明らかになりました。

池袋2丁目周辺でキャッチとして働く男性は、「この店はあまり人気がなかった。昼からガールズバーで遊ぶ客は少なく、いても馴染みの店に行く。正直、活気がない店だった」と証言しています。周辺住民からも「昼は人が少ない」「営業していることを知らなかった」といった声が多く聞かれ、集客に苦戦していた様子がうかがえます。売上不振が、被害女性に売春を強制し、その収益で穴埋めしようとした動機につながった可能性が指摘されています。現在、鈴木容疑者は容疑を否認しており、その動機は明らかになっていませんが、経済的な困窮が女性への搾取を正当化するものでは決してありません。

大久保公園に見る「管理売春」の構造とホストクラブの影

被害女性が売春を強いられた新宿・大久保公園周辺では、同様の「管理売春」が珍しくないという実態が浮き彫りになっています。4年ほど前から大久保公園周辺で「立ちんぼ」をしているという女性は、「誰かに言われてここに来させられる人は一定数いる」と語ります。

特に問題視されるのは、ホストクラブとの関連性です。多くの女性が「担当(指名ホスト)に『売掛(ツケ)を来週までに払って』とか『お金がないなら体を売ってから店に来て』と言われ、立ちんぼをしていた」と証言しています。中には、位置情報アプリをスマートフォンにインストールさせられ、常に監視された状態で売春をさせられていたケースもあります。

ホストによっては、高圧的で横柄な態度で接客するタイプもおり、気の弱い女性がそのようなホストに入れ込むと、その言いなりになってしまう心理が働くと指摘されています。担当ホストに嫌われたくないという思いが先行し、自ら進んで体を売ってしまうという複雑な心理状態です。ホストと客の女性との間に成立する「特別な世界観」の中で、「プレイ」のような感覚で売春が行われることもあります。

しかし、その実態は単純なものではありません。担当ホストが自身の整形費用や裏スロット、裏カジノでの負け分を女性に貢がせ、売春を強要するケースも報告されています。「売れていないホストに寄生されている」状態に陥り、「これからきっちり5万稼いでこい」などと言われて立ちんぼをする女性も少なくありません。こうした状況に追い込まれた女性たちは、精神的に病んでしまい、最終的には風俗業界で働くことになってしまう悲劇が繰り返されています。

法改正後の課題と社会への警鐘

女性を暴力で支配し、正常な判断ができないほどの洗脳状態に追い込んで金を巻き上げる行為は、決して許されるものではありません。今年6月に施行された改正風営法により、ホストクラブに対する規制は強化され、ホスト絡みの管理売春の事例は以前より減少したと、前出の立ちんぼ女性も証言しています。

しかし、今回の池袋ガールズバー経営者の事件が示すように、法改正後も女性を奴隷のように扱い、身体を売らせて金を稼がせようとする悪質な輩は後を絶ちません。この事件は、単なる犯罪行為にとどまらず、現代社会における女性の脆弱性や、搾取の構造が巧妙化している現状を浮き彫りにしています。社会全体として、このような人権侵害に対してより一層の警戒と、被害女性への支援体制の強化が求められています。


参考文献:

  • FRIDAYデジタル