福岡を代表する銘菓といえば、多くの人が「筑紫もち」を思い浮かべるでしょう。きな粉餅に黒蜜をかけていただく、シンプルながらも奥深い味わいが魅力です。しかし、この筑紫もち、実は全国各地に似たお菓子が存在するのです。今回は、筑紫もちの魅力を紐解きながら、そのルーツを探る旅に出かけましょう。
筑紫もちとそっくり?全国の銘菓たち
筑紫もちと見た目がそっくりなお菓子、実はいくつかあります。山梨県の「桔梗信玄餅」、新潟県の「出陣餅」、そして鳥取県の「大風呂敷」。これらの餅菓子は、いずれもきな粉と蜜を組み合わせた伝統的な和菓子です。
筑紫もちと似ている銘菓3つ
それぞれのお菓子を実際に食べ比べてみると、その違いが見えてきます。「桔梗信玄餅」はきな粉がたっぷりで黒蜜の濃厚な甘さが特徴。1968年発売と、今回比較する中で最も歴史があります。一方、「出陣餅」はよもぎの香りが爽やかな草餅で、きな粉には塩味が効いています。1969年に発売開始されました。
少し変わったところでは、「大風呂敷」は鳥取県産の梨を使った透明な蜜をかけていただきます。甘塩っぱい味わいが意外にもきな粉餅とよく合います。発売は1973年です。
そして最後に「筑紫もち」。黒蜜は他のものより色が薄く、きな粉の量は控えめ。餅はふっくらとした食感で、上品な味わいが楽しめます。発売は1977年でした。
筑紫もち誕生秘話:おばあちゃんの味を再現
実は筑紫もちは、今回比較した4つの商品の中で最も後発でした。そこで、製造元の如水庵に直接取材を敢行。すると、筑紫もちは先代の森恍次郎会長が考案した完全オリジナル商品であることが判明しました。
森会長は、山陽新幹線博多延伸を記念したお菓子を開発する際、幼少期に食べたおばあちゃんのきな粉餅を思い出したそうです。七輪で焼いた餅にきな粉をまぶし、黒砂糖をかけた、とろけるような懐かしい味。その記憶を元に、試行錯誤を重ね、ついに納得のいく味にたどり着いたのが1977年。すでに各地で似た商品が販売されていましたが、森会長は「みんなが美味しいと思う味」だと確信していたといいます。
開封した「筑紫もち」
筑紫もち:福岡のソウルフード
現在、年間1200万個も売れる看板商品となった筑紫もち。上品な風呂敷包みは、福岡の老舗和菓子店「赤坂もち」を参考にデザインされたそうです。
筑紫もちは、おばあちゃんの愛情と、福岡への郷土愛が詰まった、まさに福岡のソウルフードと言えるでしょう。機会があれば、ぜひその上品な味わいを体験してみてください。