韓国では、2023年8月に開始された福島原発処理水の海洋放出に対し、野党や市民団体から強い反発の声が上がっていました。当時、共に民主党の李在明代表は「第2の太平洋戦争」とまで表現するなど、深刻な懸念が表明されていました。しかし、放出開始から1年以上が経過した今、状況は大きく変化しています。本記事では、韓国における処理水放出への反応の変化とその背景を探ります。
処理水放出への初期の反応
2011年の東日本大震災による福島原発事故は、韓国社会に大きな衝撃を与えました。事故発生から12年後の処理水放出開始は、韓国国内で不安や怒りを呼び起こし、海洋汚染や水産物への影響に対する懸念が広く共有されていました。特に、野党は政府の対応を批判し、大規模な抗議活動も行われました。
1年後の変化:沈静化する懸念
しかし、最初の放出から10回、そして11回目の放出が予定されている現在、韓国国内の反応は大きく変化しています。野党からの反発の声は以前と比べて弱まり、大規模な抗議活動も見られなくなりました。
科学的データに基づく安全性の確認
この変化の背景には、科学的なデータの蓄積があります。韓国原子力安全技術院(KINS)は、放出開始以降、継続的にモニタリングを実施し、その結果を報告書として公表しています。これまでの報告書では、いずれも海洋や水産物への影響は確認されていません。
alt韓国国会で福島原発処理水海洋放出撤回を求める国際共同会議に出席した共に民主党の李在明代表(2023年9月撮影)
韓国海洋水産部も、国内で流通する水産物に対して2万8000回以上の放射能検査を実施し、いずれも基準値を超える放射性物質は検出されていません。これらの検査対象には、塩、魚類、貝類、海藻類など、様々な種類の水産物が含まれています。
さらに、韓国沿岸の海水や海水浴場、全国238カ所の放射線監視所でも、異常値は観測されていません。これらのデータは、処理水放出が韓国の海洋環境や水産物の安全性に影響を与えていないことを示唆しています。
専門家の見解
慶煕大学原子力学科の鄭釩津教授は、「2011年の事故直後に放出された未処理の汚染水でさえ問題がなかったのに、基準値以下に希釈された処理水で問題が発生するとは考えにくい」と指摘しています。この見解は、多くの専門家によって共有されており、科学的な根拠に基づいた冷静な議論の必要性を強調しています。
今後の展望
福島原発処理水の海洋放出は、今後も継続される予定です。韓国政府は、引き続きモニタリングを強化し、国民への情報提供を徹底していく方針です。透明性のある情報公開と科学的な検証を通じて、国民の不安を払拭していくことが重要です。
まとめ
福島原発処理水の海洋放出に対する韓国の反応は、当初の強い反発から、科学的データに基づく冷静な評価へと変化しつつあります。KINSや海洋水産部による継続的なモニタリング、そして専門家による分析は、処理水の安全性を裏付ける重要な根拠となっています。今後も、客観的なデータに基づいた議論を続け、風評被害の防止に努めることが求められます。