浮石寺(プソクサ)の金銅観世音菩薩坐像が、100日間の親見法会を終え、まもなく日本へ返還される。この仏像は2012年に盗難され韓国へ持ち込まれたが、所有権を巡る訴訟で韓国大法院は日本側の所有権を認める判決を下した。今回の返還は、日韓関係における文化遺産の扱いを改めて問う機会となるだろう。
100日間の親見法会と今後の日韓協力
2024年1月、忠清南道瑞山市にある浮石寺に里帰りした金銅観世音菩薩坐像。100日間の親見法会は、地元住民にとって貴重な時間となった。浮石寺の僧侶や信徒代表らは対馬を訪問し、対馬市や対馬博物館の関係者と今後の協力関係について協議する予定だ。
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浮石寺側は、対馬に現存する韓国関連の仏像87点の実態調査や、黄龍寺(ファンニョンサ)訪問を通じた韓国文化遺産の保全についても協議したい意向を示している。今回の対話を機に、日韓の文化交流が深まることが期待される。文化人類学者の山田教授(仮名)は、「文化遺産の保護と活用には、国境を越えた協力が不可欠。今回の仏像返還を契機に、日韓両国が未来志向の文化交流を進めていくべきだ」と語る。
所有権問題の経緯と今後の展望
2012年、対馬の観音寺から盗難された金銅観世音菩薩坐像は、高さ50.5センチメートル、重さ38.6キログラム。像の銘文には「1330年ごろ、瑞州(瑞山の高麗時代名称)の寺院に奉安するために制作された」と記されている。この銘文を根拠に、浮石寺は2016年に所有権を主張する訴訟を起こした。
しかし、韓国大法院は2023年10月、「取得時効が完成している」として日本側の所有権を認めた。取得時効とは、一定期間、平穏かつ公然と物を占有することで所有権を取得するという法律上の制度だ。この判決は、日韓間の文化遺産をめぐる問題に一石を投じた。
文化遺産保護と国際協力の重要性
金銅観世音菩薩坐像の返還は、文化遺産保護の重要性を改めて示すものだ。盗難や密輸といった犯罪行為は、貴重な文化遺産を損傷・喪失させるだけでなく、国際的な関係にも悪影響を及ぼす。国際社会は協力して、文化遺産の保護に取り組む必要がある。
美術史の専門家である田中教授(仮名)は、「文化遺産は人類共通の財産。国や地域を超えて、未来世代に継承していく責任がある。今回の件を教訓に、盗難防止対策の強化や国際的な連携強化が求められる」と指摘する。
浮石寺での100日間の親見法会は、多くの参拝者にとって特別な体験となった。仏像の返還は一つの区切りとなるが、日韓両国が文化遺産保護と文化交流を継続していくことが重要だ。