イスラエル軍によるガザ地区でのパレスチナ人への性的暴力、妊産婦医療施設の破壊など、ジェノサイド(集団虐殺)行為に相当する可能性があると国連人権理事会の調査委員会が非難しました。本記事では、この衝撃的な報告書の概要と国際社会の反応について詳しく解説します。
国連報告書の概要:性的暴力と医療施設破壊の実態
国連人権理事会の独立国際調査委員会は、2023年10月のハマスによるイスラエル奇襲以降のガザ地区における状況を調査し、報告書を公表しました。報告書は、イスラエル軍によるパレスチナ人への性的暴力の増加、妊産婦・生殖医療施設の体系的な破壊を告発しています。
性的暴力の横行:恐怖による支配の構造
報告書は、公衆の面前での強制的な裸体化、レイプの脅迫、性的暴行など、様々な形態の性的暴力やジェンダーに基づく暴力が、イスラエル治安部隊の標準的な活動手順の一部になっていると指摘しています。これらの行為は、パレスチナ人を恐怖に陥れ、自己決定を損なう抑圧的な体制を永続させることを目的としていると委員会は主張しています。
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委員会メンバーのクリス・シドティ氏は、BBCの取材に対し、性的暴力の体系的な広がりを指摘し、もはや偶発的な行為のレベルを超えていると述べています。
医療施設の破壊:ジェノサイドの定義に該当?
報告書はさらに、ガザ地区における産科病棟、不妊治療クリニックの破壊についても深刻な懸念を表明しています。特に、アル・バズマ体外受精クリニックへの攻撃で約4000個の胚、1000個の精子サンプルと未受精卵が損なわれたことについて、ジェノサイドの法的定義の一つである「特定の集団の出産の阻止」を狙った戦略の実施を示す可能性があると指摘しています。
委員会は、イスラエル当局が生殖医療へのアクセスを制限することで、女性や少女が妊娠・出産に関連する合併症で死亡するケースが増加していると指摘。これは人道に対する罪の一つである「根絶」に相当すると結論付けています。
イスラエル側の反論と国際社会の反応
イスラエル政府は、報告書の内容を全面的に否定しています。ネタニヤフ首相は、国連人権理事会を「反ユダヤ主義的で腐敗した機関」と非難し、報告書はハマスによる戦争犯罪から目をそらすための虚偽の主張だと反論しました。イスラエル国連代表部は、報告書が裏付けのない情報源に基づいていると主張し、イスラエル軍には性的暴力行為を明確に禁止する指示や手続きがあると強調しています。
一方、南アフリカはイスラエル軍によるガザのパレスチナ人へのジェノサイド行為の疑いについて、国際刑事裁判所(ICC)に審理を要請しています。この件は現在も審理が続いており、国際社会の注目が集まっています。
紛争の背景:ガザ地区の人道的危機
2023年10月のハマスによるイスラエル奇襲攻撃と、それに続くイスラエル軍によるガザ地区への攻撃により、深刻な人道的危機が発生しています。数万人が死亡し、インフラは破壊され、医療、食料、水などの生活必需品が不足しています。ガザ地区の住民の大多数が避難生活を強いられており、復興への道のりは長く険しいものとなっています。
この紛争は、長年にわたるイスラエルとパレスチナの対立の深刻さを改めて浮き彫りにしました。和平への道筋は見えず、ガザ地区の人々は今もなお、困難な状況に置かれています。
今後の展望:国際社会の役割と和平への模索
国連の報告書は、ガザ地区における人権侵害の深刻さを改めて国際社会に突きつけました。今後の焦点は、国際社会がどのように対応し、和平への道筋を探っていくのかにかかっています。中立的な調査の実施、人道支援の拡充、そして何より、紛争の根本原因への取り組みが不可欠です。