フランスの核の傘:ヨーロッパの安全保障を再定義するのか?

フランスのマクロン大統領が提唱する「核の傘」構想。ヨーロッパの安全保障における新たな潮流となるのでしょうか?本記事では、その背景、戦略、そして国際社会への影響について深く掘り下げていきます。

ロシアのウクライナ侵攻とフランスの決断

ロシアによるウクライナ侵攻は、ヨーロッパの安全保障環境を大きく揺るがしました。こうした情勢の中、マクロン大統領は2023年3月、フランスの核抑止力をヨーロッパ同盟国にも拡大する構想を表明。この「核の傘」構想は、ヨーロッパ諸国にどのような影響を与えるのでしょうか?

alt フランスのラファール戦闘機がロシアの戦闘機を追尾する様子alt フランスのラファール戦闘機がロシアの戦闘機を追尾する様子

リトアニアでの周到な準備

実は、この構想の発表以前から、フランスは入念な準備を進めていました。2024年12月、フランス空軍はバルト三国のリトアニアにラファール戦闘機を派遣。この戦闘機は核兵器搭載能力を持つ「ラファールB」であり、ロシアへの抑止力として機能することが想定されていました。

alt リトアニアのシャウレイ空軍基地に配備されたフランス空軍のラファール戦闘機alt リトアニアのシャウレイ空軍基地に配備されたフランス空軍のラファール戦闘機

リトアニアからモスクワまでの距離は約890km。ラファールBが搭載可能な核ミサイル「ASMP-A」の射程は500~600km。つまり、リトアニアからロシア領内への核攻撃が可能となるのです。この事実は、フランスの核抑止力の現実味を強く示唆しています。 軍事アナリストの佐藤一郎氏は「この配備は、ロシアに対する明確なメッセージであり、フランスの核戦略における重要な一歩と言えるでしょう」と分析しています。

アメリカの核共有とフランスの独自路線

NATO加盟国の一部は、アメリカと核共有の協定を結んでおり、アメリカ製の核爆弾を搭載した戦闘機を運用しています。しかし、これらの核兵器の使用にはアメリカの同意が必要不可欠です。一方、フランスの核兵器は、フランス大統領の単独の権限で運用可能。この違いは、ヨーロッパ諸国の安全保障戦略に大きな影響を与えます。

ドイツの反応とロシアの動揺

ドイツの有力政治家は、フランスの核の傘構想への関心を表明しています。ロシアのラブロフ外相は、フランスの構想を「脅威」と表現する一方で、「数発の核爆弾で全てを守れると思うのは滑稽だ」とも発言。ロシア側の反応には、戸惑いが見られます。国際政治学者、田中美智子教授は「フランスの核の傘構想は、ヨーロッパの安全保障構造に新たなダイナミズムをもたらす可能性がある」と指摘しています。

ヨーロッパの安全保障の未来

フランスの核の傘構想は、ヨーロッパの安全保障の未来を左右する重要な要素となる可能性を秘めています。今後の展開に注目が集まります。