元県民局長PC暴露が「言ったとおり」と注目の奥山教授に聞く、斎藤元彦知事が「通報者を貶める理由」


「倫理上極めて不適切な、わいせつな文書を作成」

兵庫県の斎藤元彦知事(47)に対する告発文書問題をめぐり3月5日、百条委員会は県の対応に「大きな問題があった」と結論づけた。

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だが、斎藤知事は

「県の対応には問題がなかった」

と主張。さらに告発し昨年7月に亡くなった元県民局長に対して

「倫理上極めて不適切な、わいせつな文書を作成していた」

と公用パソコンの“私的文書”の中身について初めて発言し波紋を広げている。

当初から指摘があったが、百条委員会は調査報告書で、

「外部公益通報に当たる可能性が高く、現在も違法状態が継続している可能性がある」

とした。

この一連の流れに警鐘を鳴らした専門家の動画が今、SNS上で改めてフィーチャーされ、

《まさに言ったとおりになっている》

と話題になっている。

動画のもとは、昨年9月の百条委員会に参考人として招かれ意見を述べた、公益通報制度に詳しい上智大学の奥山俊宏教授のものだ。

教授によれば、

《内部告発をした人は大抵あることないことを織り交ぜ誇張された人格攻撃にさらされる》

という。告発された側は告発の“内容に反論”するのではなく、“告発した人”を攻撃するのが常と分析。それは、海外でもよく見られる典型的なパターンだという。さらに、

《それはなぜか? 一つは痛いところを突かれたと感じ「バラしやがって!」と怒り、思わず感情をあらわにしてしまう、というもの。もう一つは、内部告発した人の評判や信用を貶めて告発の内容の信憑性を低めようとする狙いの意図的な攻撃。しかしそれだけが人格攻撃の理由ではありません。人格攻撃と漏洩非難の大きな狙いは内部告発の連鎖を止めることにある》

と動画では述べている。

要するに、告発者の人格や日頃の行動を非難し、

「こんな人物の言うことは信用できない」

と論点をすり替え、世論に刷り込むのが、告発された側の反応の典型パターンだという。

さらに、人格攻撃で通報者を非難し見せしめにすることにより、次に続く通報を阻止する狙いがあるという。斎藤知事が3月5日に元県民局長のPCについて言及したのは、このパターンにぴったりだと、SNSで話題になったのだ。

フライデーデジタルは、改めて奥山教授の元を訪れ、話を聞いた。

――3月4日、百条委員会は“現在も違法状態が継続している可能性がある”と結論づけましたが?

「公益通報者に対する不利益な取り扱いや公益通報者の探索が行われた場合には、事業者は、救済・回復の措置をとらなければならない、そんな義務を負っています。公益通報者保護法とその指針で事業者はそう義務づけられていて、301人以上の従業員がいる事業者がこれに従わなければ法令違反となります。ところが、斎藤知事と兵庫県は未だにそうした措置を怠っています。だから、“違法状態が継続している可能性がある”ということになるわけです。百条委員会の報告書は、『県自らの対応として』、こうした義務に従って『措置を行う必要があると考える』と明確に述べています」

――法令違反ならば、警察が取り締まることができるのですか?

「現行の公益通報者保護法には刑事罰が実質的にありません。ですので、違反があっても捜査機関はその取り締まりに動くことができません。問題の発言の前日3月4日に、斎藤知事のような事例を今後抑止しようと、政府は特に悪質な違反者に刑事罰を科すことができる規定を盛り込んだ法改正案を閣議決定して国会に提出しました。すべての違反が刑事罰の対象になるわけではないので、不十分なところは多々ありますが、そうであっても、公益通報者への安易な不利益扱いを思いとどまらせる効果は期待できるでしょう。ところが、その改正法案の閣議決定の翌日、しかも、元県民局長は公益通報者である可能性が高いとの百条委員会報告書が県議会本会議で全会派の賛成で採択された当日に、斎藤知事が公の場で、その報告書についての質疑に応じるなかで、元県民局長を新たに個人攻撃したのは、県議会だけでなく、政府、公益通報者保護制度そのものに挑戦・反抗しようとする、そういう態度に見えます」

◆内部告発者に対する個人攻撃の典型例

――NHK党の立花孝志氏(57)は選挙中から元県民局長のパソコンの中身を発言していました。一方、斎藤知事は今回初めて“わいせつな文書”などと言及しましたが?

「公の場で知事本人があからさまに言及するのは今回の記者会見が初めてでしたが、告発から間もない昨年春ごろに、知事の側近だった県の総務部長が、元県民局長の公用パソコンの中にあった『元県民局長のプライバシー情報』を県議会議員らに見せて、『告発文書はこのような人間がつくったものだから信用に値しない』という趣旨の話を言い触らしていたことが百条委員会の調査で判明しています。これはまさに内部告発者に対する個人攻撃の典型例です。告発の内容に反論するよりも先に、告発者の人格を攻撃するのです。今回の知事発言はその延長線上にあるように見えます。

昨年春に県が元県民局長の処分を急いだ理由をめぐって、百条委員会の報告書は、斎藤知事は、『風向きを変えたい』との理由から、処分をできるだけ早くしたほうがいいと指示した、と指摘しています。今回3月5日の記者会見での知事発言は、百条委員会の厳しい指摘が公表された直後のことですから、自分に向かって吹く逆風を少しでもそらして、元県民局長に非難の風を向かわせようという狙いがあってのことであるように見えます。内部告発で図星を突かれた側が示す反応の典型パターンと一致しています。

昨年5月7日に元県民局長を停職3ヵ月の懲戒処分とした際に、県は4つの理由を挙げていました。記者会見で質問が出たのは、このうち1つ目の理由となった告発文書についてです。先ほど申し上げましたように、県は、元県民局長に対する救済・回復の措置を義務づけられており、百条委員会の報告書は、県自らの対応としてその措置を行う必要があると県に求めています。これについて記者が質問したのですが、知事はあえて、告発文書とは関係のない『私的な文書』の内容に踏み込んで発言したのです。もしその内容についての説明が本当に必要であれば、3月5日ではなく、懲戒処分を発表した昨年5月7日にそれを説明するべきでした。おそらく、県行政としてそれを言う必要性は露ほどもないのに、斎藤知事個人はそれを言い触らしたいのでしょう。斎藤知事は今回、“不必要に”元県民局長を攻撃したのです」

◆行政機関のトップでさえ法令を真っ向から破る

――今回の兵庫県の公益通報者保護違反のケースが、世間に引き起こす影響は?

「元県民局長が受けたようなひどい仕打ちは、誰だって避けたいでしょう。あのような仕打ちを受ける可能性があると分かっていて、それでも公益通報しようという気持ちには、誰だってなりづらい。そのような恐れを、兵庫県職員だけではなく、日本の多くの人たちが持ってしまったと思います。そのような萎縮によって、なされるべき公益通報がなされなくなれば、表に出てくるべき組織の不正や腐敗が隠されてしまう。その結果、被害を受けるのは社会の側、私たち皆なんです。公益通報者を守るのがこの制度の最終的な目的というわけではなくて、隠された不正や腐敗によって被害を受けるかもしれない一般の人たちを守る、まさに“公益を守る”のがこの法律の目的です。“告発者を守ることはそのための手段”です。歩道を歩く親子連れを傷つけるかもしれない車の欠陥が隠される現場に立ち会ったのに、それに対して声を上げられない、そんな社会にしたくはありません。

3月4日に政府が閣議決定した公益通報者保護法の改正案では、公益通報を理由とした懲戒処分や解雇の行為者や事業者に刑事罰を科すことになっています。まさに兵庫県がそうでしたけれども、元県民局長が公益通報者に該当するかどうか、きちんとした検討をせずに処分に突き進むということは、大幅に減るかもしれません。刑事罰が入れば“ちょっと待てよ、公益通報者保護法がたしかあったな”ということになるでしょう。かつてはあまり刑事罰には賛成していなかったのですが、今回のケースを見ると、行政機関のトップでさえ法令を真っ向から破るのですから、刑事罰が必要だなと考え直しました。と同時に、改正法案の閣議決定の翌日の斎藤知事の発言については、懲戒処分や解雇ではなく、公益通報者に対する事実上の嫌がらせなので、改正法案でカバーできていない。なので、今国会での法案修正か、次の法改正では、公益通報者への嫌がらせについても、刑事罰を科すことができるようにしてほしい、と思います」

一方の斎藤知事は3月11日に会見で、“なぜ5日に元県民局長のパソコンの中身について言及したのか?”を記者に聞かれると、

「勤務時間中に業務と関係ない私的な文書を作成したことの内容を改めて説明をさせていただいたということです。懲戒処分についてのご質問がありましたので、私のほうから処分の扱いについての説明、4つの非違行為についてご説明をさせていただいて、これについては県としては、適切な対応だったということを説明させていただいたということで、対応に問題はなかったというふうに考えています」

と答えている。あらためて、“その発言については問題なかったか”という問いには、

「倫理上問題のある文書を作成されたということは、実際、事実ですので、それは発言をさせていただいたということですね」

と答えており、元県民局長のPCに言及したことについては“問題ナシ”という態度を貫いている。

再選を果たし、胸を張って県知事の業務をこなしているという斎藤知事。公職選挙法違反疑惑の問題もくすぶり続けるなか、県民の心中はいかに――。

FRIDAYデジタル



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