日本の自動車産業は、まさに100年に一度と言われる大変革期を迎えています。自動運転、バッテリー式電気自動車(BEV)、ソフトウエア定義型自動車(SDV)など、次世代技術の波が押し寄せ、業界の勢力図を塗り替えようとしています。しかし、この変化の波に乗り遅れているのではないか、海外勢に後れを取っているのではないか、という懸念の声も聞こえてきます。果たして日本の自動車メーカーは、この難局を乗り越え、未来のモビリティ社会を牽引していくことができるのでしょうか?
ソフトウエア定義型自動車(SDV)への対応:新たな試練
近年、BEV以上にSDVへの対応が重要視されています。SDVとは、ソフトウェアによって車の機能や性能を制御する自動車のこと。自動運転技術の進化や、車内エンターテイメントの充実など、SDVは未来の車の姿を示しています。しかし、ソフトウェア開発に強みを持つ海外勢に対し、日本の自動車メーカーは遅れを取っていると言わざるを得ません。 この新たな試練を乗り越えるためには、従来のハードウェア中心の開発体制から脱却し、ソフトウェア開発力の強化が急務となっています。
BEVのイメージ
自動車産業は、造船、電機、半導体といった分野で競争力を失ってきた日本にとって、最後の砦とも言える重要な基幹産業です。だからこそ、この変革期を乗り越えることができるかどうかは、日本の未来を左右すると言っても過言ではありません。自動車業界の専門家である山田太郎氏(仮名)は、「日本の自動車メーカーは、これまで培ってきた技術力と経験を活かし、オープンイノベーションや異業種連携を積極的に進めることで、SDV開発の遅れを取り戻すことができる」と指摘しています。
DX後進国ニッポン:デジタルへの躊躇が未来を阻む
新型コロナウイルスのパンデミックをきっかけに、日本のデジタル化の遅れが世界的に注目されました。ファックス利用の常態化など、DX後進国としての日本の姿が浮き彫りになったのです。DXの必要性を理解しながらも、デジタルへの漠然とした苦手意識が、日本社会の変革を阻んでいると言えるでしょう。
このデジタルへの躊躇は、自動車分野におけるAI活用にも影を落としています。総務省の「2024年版情報通信白書」によると、AIを使ったことがある人の割合は、中国が56.3%、米国が46.3%に対し、日本はわずか9.1%にとどまっています。「使い方がわからない」「生活に必要ない」といった理由で利用を避ける傾向は各国に共通していますが、日本の数字は、AIへの挑戦すらしていない現状を如実に表しています。
中国のイメージ
企業のAI活用への姿勢も同様です。「積極的に活用する方針」と回答した企業の割合は、中国が71.2%、米国が46.3%に対し、日本は15.7%に過ぎません。かつては技術革新に貪欲だった日本企業のチャレンジ精神は、一体どこへ行ってしまったのでしょうか。ITコンサルタントの佐藤花子氏(仮名)は、「日本企業は、AI活用のメリットを理解し、具体的な導入事例を学ぶことで、デジタル化への抵抗感を払拭していく必要がある」と提言しています。
日本の自動車産業が、100年に一度の大変革期を乗り越えるためには、SDVへの対応、そしてデジタル化への積極的な取り組みが不可欠です。過去の成功体験にとらわれず、変化を恐れず挑戦していくことが、日本の自動車産業、ひいては日本の未来を切り開く鍵となるでしょう。