新型コロナウイルス対策では、IT技術も積極活用されている。政府や自治体が毎日公表を続けている各地の人出の増減率もその1つだ。使われているのは携帯電話事業者やIT大手が提供する「人流ビッグデータ」。スマートフォンから得られるデータを基に人の移動の流れを推計する技術で、政府が政策判断をする際の参考となっている。技術革新で人類が手に入れた“新たな武器”とも言え、未知のウイルスとの闘いに今後も重宝されそうだ。
「気の緩みがある。再び大きな流行になる」
5月16日の記者会見で、西村康稔経済再生担当相は危機感をあらわにした。改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が全面解除になる9日前のことだ。
政府は14日に39県を対象とした宣言解除に踏み切ったばかりだった。しかし引き続き重点対策が必要な特定警戒都道府県に含まれる東京都や大阪府、札幌市の繁華街の人出は前日に比べ1~2割増えていた。
西村氏の発言の根拠となったのが、携帯電話事業者などから連日得ている「人流ビッグデータ」だ。携帯事業者などはスマートフォンから基地局に届く電波の量や、アプリで使うGPS(衛星利用測位システム)の情報を蓄積している。これを携帯電話契約などから得られる利用者の年齢や性別と組み合わせれば日本全国で人の移動の流れを分析することができる。
政府はこうした情報が外出自粛要請の効果を検証する上で有効だと判断し、3月31日に携帯電話事業者やIT大手に保有データの提供を要請していた。
各社独自の情報提供
携帯電話各社のデータはそれぞれ強みが違う。NTTドコモは全国の主要駅、KDDI(au)は観光地、ソフトバンクの子会社「Agoop(アグープ)」は繁華街を中心に情報を提供。またヤフーは県境を越えた人の動きなどを政府に提供するほか、都道府県などにもデータ提供を行っている。