2025年大阪・関西万博の開催が近づく中、警備や飲食業界における深刻な人手不足が大きな課題となっています。半年間という期間限定のイベントであるがゆえに時給が高騰し、平均の2倍以上を提示する企業も現れています。この状況は、万博に関わらない企業への影響、そして閉幕後の日本経済にどのような影響を与えるのでしょうか。本記事では、万博の人材不足問題を多角的に考察し、その展望を探ります。
警備業界の人材確保の現状
高騰する時給と応募者の声
万博会場の警備業務を担う人材の確保は急務となっています。ハローワーク大阪西で開催された就職面接会では、警備会社2社がブースを出展。時給などの好条件が提示されたこともあり、参加枠はすぐに埋まり、参加を希望するも叶わなかった求職者もいたほどです。一方で、高時給とはいえ、夏場の炎天下での勤務を懸念する声もあり、応募者の確保は容易ではありません。
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警備業界の現状と課題
リクルートの調査によると、関西圏の警備員の平均時給は1230円(2025年2月時点)。前年同月比で7.3%増と上昇傾向にあります。しかし、万博会場では2500円という破格の時給が提示されているケースもあり、業界全体の賃金格差が浮き彫りになっています。人材不足が深刻な警備業界にとって、この状況は大きな課題と言えるでしょう。例えば、イオンディライトセキュリティは1200~1500円の時給を提示していますが、担当者は「採算を考えれば、これ以上出せない」と苦悩を明かしています。彼らは日当の支給や万博後の雇用継続をアピールすることで、人材獲得を目指しています。
飲食業界への波及効果
万博に伴う人手不足は、警備業界だけでなく飲食業界にも波及しています。会場内外の飲食店では、多くのスタッフが必要とされるため、人材確保競争が激化しています。一部の企業では、通常よりも高い時給を提示することで優秀な人材の確保に努めています。
万博後を見据えた経済効果と課題
労働人口の掘り起こし
専門家の中には、万博による人手不足は高齢者や非正規雇用者など、潜在的な労働人口の掘り起こしにつながるとの見方もあります。一時的な雇用であっても、就業機会の創出は経済活性化に貢献する可能性があります。
閉幕後の経済への影響
一方、万博閉幕後の人材の流動性や雇用維持は大きな課題です。期間限定の高時給で雇用された人材が、その後どのような形で労働市場に吸収されるのか、持続的な経済成長につなげるためにはどのような対策が必要なのか、検討が必要です。「フードビジネスコーディネーター」の資格を持つA氏(仮名)は、「万博を契機に、飲食業界全体の待遇改善やキャリアアップの仕組みを構築することが重要」と指摘しています。
まとめ
2025年大阪・関西万博は、日本経済にとって大きなチャンスであると同時に、人材不足という課題も突きつけています。高騰する時給への対応、閉幕後の雇用問題など、解決すべき課題は山積しています。万博を成功させ、その経済効果を最大限に活かすためには、関係各所が連携し、長期的な視点で人材戦略を構築していく必要があります。