【主張】香港の弾圧 牙剥く中国の暴挙を阻め


 香港での抗議活動で、デモ隊への鎮圧が悲惨な流血を招いている。議会に対する露骨な弾圧も始まった。

 手を下すのは香港警察であっても、中国政府の指示こそが弾圧の根源である。中国が本気で牙を剥(む)いてきたと受け止めなくてはならない。

 新たな流血の回避が緊急の課題であることはもちろんである。ただ、中国の弾圧は香港の自由そのものが標的だ。銃口で民主の叫びが封じられた30年前の天安門事件を、香港で再現させてはならない。中国の暴挙を阻止するため、国際社会は結束して非難の声を上げるべきだ。

 10月末の中国共産党中央委員会総会(4中総会)が香港の治安強化方針を決議した。続いて香港特別行政区の林鄭月娥行政長官と会談した習近平国家主席らが「最重要任務」として秩序回復を命じた。この流れの中での弾圧だ。

 6月に大規模デモが起きてから初めて、抗議に参加していた学生が死亡した。さらに、警官に拳銃で撃たれた若者が一時重体となった。香港警察の白バイが、逃げるデモ隊に突進するという異常な映像も公開された。

 警官の発砲による負傷者は10月にも出ていた。適正な銃器使用だったという警察の弁解は、全く成り立たない。香港の一般市民までが「警察の暴力」を強く非難しているのも当然である。デモ参加者を「暴徒」と一方的に断じる林鄭氏の談話は無責任極まりない。

 弾圧はデモの現場にとどまらない。香港議会である立法会では、民主派議員7人が逃亡犯条例改正案の審議を「妨害した」として警察に逮捕された。

 改正案はすでに正式撤回されている。議場での言動を理由に議員が逮捕されるとは、高度自治の原則を公然と踏みにじる暴挙だ。

 逮捕された議員の一部は、24日の区議会議員(地方議会)選挙に出馬している。区議選は、香港では例外的に有権者の直接投票が認められており、親中派の劣勢が伝えられる。貴重な民意の表明機会である。妨害は許されない。

 中国支配に目障りな動きが徹底的に排除されようとしている。米国務省は香港の「事態沈静化」を促す声明を発表した。菅義偉官房長官も「事態の早期収拾」に言及したが、これでは足りない。中国に対して暴挙阻止を強く迫る毅然(きぜん)とした対応を求めたい。



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