【主張】NHK同時配信 受信料の再値下げが先だ


 NHKの肥大化に総務省が待ったをかけた。テレビ番組をインターネットでも流す常時同時配信を認可せず、まずは受信料のあり方や業務全体の縮小、効率化を検討するよう要請した。

 当然である。受信料にあぐらをかき、公共放送の役割を忘れて独占や肥大化が進めば、民放と二元体制で築かれてきた放送メディアの健全な発展はかなわない。

 改正放送法で常時同時配信が可能になり、NHKがその業務案を認可申請していた。今年度中に配信開始の予定だったが、総務省は認可の適否を示さず、業務・受信料・ガバナンス(組織統治)の三位一体改革などを求めた。

 放送法改正にあたり、同局の経営改革は前提とされてきたことである。高市早苗総務相は「ネット活用業務を含む業務全体を肥大化させないことが求められる」と明言した。

 とくに受信料について、総務省が引き続き検討を求めたことに注目したい。受信料収入は年間7千億円を超える。一方で財政安定のための繰越金残高はNHK本体で1千億円超もある。受信料が適正かというのは当然の疑問だ。

 NHKは10月の消費税増税時に受信料を据え置き、来年10月に2・5%の値下げを行う。合わせて実質4・5%程度の値下げだというが、もっと下げられないのか、納得できる説明が必要だ。

 総務省は、同時配信の費用の上限に注文をつけたほか、適正な給与水準の検討、子会社の業務範囲の適正化なども求めている。NHKは具体的な改革案を早急に示さなくてはならない。

 NHKは過去にプロデューサーの制作費着服などの不祥事が相次ぎ、改革の途上にある。受信料という安定収入に甘えたモラルやコスト意識の欠如が指摘される。改革はどこまでなされたのか。その進捗(しんちょく)を明示すべきだ。

 常時同時配信で利便性が高まるとしても、そこには多額の経費がかかり、競合する民放の経営に影響するなど多くの課題もある。報道、防災情報以外に、バラエティー番組などをネット配信することが、公共放送として本当に必要なのか疑問を持つ視聴者もいる。

 最高裁は「公共の福祉」をかなえるNHKの放送目的を重視して受信料制度を合憲とした。公共放送としての役割を改めて問い直してほしい。



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