トランプ米政権が4月2日に公表する「相互関税」の制度設計を急いでいる。相手国と同水準まで関税を上げるとした相互関税について、米政府は相手国の税率だけでなく、非関税障壁なども考慮し、国ごとに一つの関税率を決める見込みだ。ただ、200カ国近くある貿易相手ごとに、客観的で公正な数値を短期間に算出するのは困難で、恣意(しい)的に運用される懸念がぬぐえない。
「わが国にとって『解放の日』になる。愚かにも他国に明け渡してきた富を取り戻すからだ」
トランプ氏は16日、大統領専用機内で記者団にそう語り、改めて4月2日に新たな関税措置を公表する意向を強調した。
これまでトランプ氏は「相手が課すのと同じ関税を相手にも課す。それこそ公平だ」と繰り返し発言。高い関税を維持する貿易相手への税率を上げ、関税収入を増やしたい意向を示してきた。
相互関税の詳細は不明だったが、ここにきて政権幹部の発言から輪郭が浮かび上がってきた。
■浮かび上がってきた相互関税の実像
米国は輸入品目ごとに定めた約1万3千の関税リストを決めている。当初、それぞれの品目を貿易相手の税率に合わせる仕組みになるとの見方があったが、ベセント財務長官は18日の米FOXテレビで、国ごとに「(米国が課す)数字が割り当てられる」と説明。「ある国は低く、別の国は高くなるだろう」とした。
また、トランプ氏は16日、相互関税に加え、分野別の関税措置も4月2日に公表する意向を明らかにした。分野別では、自動車の輸入に25%を課す案を検討。半導体や医薬品なども対象に挙げられている。
元来、相互関税の複雑な仕組みの準備には「6カ月以上要する」(米紙)とされていた。現在も政権内で制度設計の議論が続いているようだ。
米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は18日、貿易相手を3種類に分けた上で、それぞれ税率を決める簡略案がいったん浮上したが、却下されたと伝えた。トランプ氏の意向に沿って、一カ国ずつ税率を決める手法が望ましいとの意見が、簡略案を退けたという。
またベセント氏は18日の番組で、高関税や、市場参入を困難にする非関税障壁を維持する「『汚れた15カ国』と呼ぶ国々がある」と言及。優先的に関税対象とする可能性を示唆した。ただ、貿易相手国が米国との交渉を通じ、関税を免れることができるとも話した。