米アーカンソー州、娘を性的虐待した男を殺害した父が殺人罪で起訴 — 「英雄」と世論が擁護

米アーカンソー州ロノーク郡に住むアーロン・スペンサーさん(37)は、娘のチワワの狂ったような鳴き声で目覚め、14歳の娘が失踪していることに気づいた。数カ月前、娘は家族の友人であるマイケル・フォスラー容疑者(67)に性的虐待を受けたと告白しており、フォスラーは逮捕後保釈中だった。この夜、スペンサーさんは娘を性的虐待から守ろうとした結果、フォスラー容疑者を殺害したとして殺人罪に問われることになった。本事件は、父親の深い愛情と、法の裁き、そして社会の正義感が複雑に絡み合う、全米の注目を集めるものとなっている。

娘の失踪と追跡、そして悲劇的な結末

昨年10月8日の夜半過ぎ、娘が自宅から姿を消していることを知ったスペンサーさんは、すぐに車に飛び乗り、自宅周辺の路上を必死に探し始めた。妻のヘザー・スペンサーさんは911番に通報し、親戚にも娘の安否を確認した。

町から東へ約16キロ離れた夜道で、スペンサーさんは、娘が助手席に乗っているフォスラー容疑者の白い車を発見。即座にUターンし、ヘッドライトを点滅させ、クラクションを鳴らしながら猛追した。次の交差点に差し掛かった際、スペンサーさんはフォスラー容疑者の車に追突し、道路から押し出したという。

この衝突の直後、フォスラー容疑者は側溝に仰向けで倒れ、死亡が確認された。その遺体には複数の銃創があった。

米アーカンソー州ロノーク郡の保安官事務所へ向かうアーロン・スペンサー氏。娘を性的虐待した容疑者を殺害し、殺人罪で起訴されている。米アーカンソー州ロノーク郡の保安官事務所へ向かうアーロン・スペンサー氏。娘を性的虐待した容疑者を殺害し、殺人罪で起訴されている。

殺人の罪に問われる父と、高まる社会の擁護の声

検察はスペンサーさんを殺人罪で起訴した。さらに、銃器を用いて犯行に及んだ場合に禁錮刑の刑期を引き上げる過重刑も追加された。スペンサーさん自身もフォスラー容疑者の殺害を認めている。

この事件はまたたく間に全国的な注目を集め、SNS上では、娘を守るために行動したスペンサーさんを「英雄」とたたえる声が激しい怒りとともに巻き起こった。スペンサーさんに対する起訴取り下げを求める嘆願書が複数提出され、中には35万人を超える署名が集まったものもあった。さらに、州の銃権利擁護団体もスペンサーさんの行動は正当なものであると宣言し、訴訟費用のための弁護基金を設立するなど、彼の支援に乗り出している。

裁判の焦点は「正当防衛」か

スペンサーさんの裁判は2026年1月に予定されている。ある専門家は、裁判の結果は一つの重要な問題に集約されるとの見方を示す。それは、陪審員が、娘を守るためにスペンサーさんが相手を死に至らしめるほどの暴力を「正当なもの」と考えるか、という点だ。

この事件は、児童性的虐待という重い犯罪に直面した親の心情と、法の秩序との間で揺れる社会の葛藤を浮き彫りにしている。人々の間に広がる「英雄視」と、司法が下す判決の間で、何が「正義」とされるのか、その結論が注目されている。

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