株式市場を震撼させ、1000億円以上もの巨額資金を動かした伝説の相場師、加藤暠氏。政財界から裏社会まで幅広い人脈を持ち、その名は常に「K氏銘柄」として市場を賑わせてきました。しかし、晩年はマスコミの取材を一切拒否し、謎に包まれたままこの世を去りました。今回は、ご家族への取材を通して明らかになった、知られざる加藤氏の素顔に迫ります。
神棚が並ぶ豪邸と、意外なほど質素な暮らし
2018年、東京都内の一等地にあるタワーマンションの高層階、加藤氏の自宅を訪ねました。東京タワーを一望できる絶景とは対照的に、部屋には異様な緊張感が漂っていました。大人の背丈ほどもある巨大な神棚が4つ、所狭しと並んでいました。伏見稲荷大社、伊勢神宮、愛宕神社、熊野神社、そして出雲大社。まるで神社仏閣をそのまま持ち込んだような厳粛な雰囲気に圧倒されました。
加藤氏の自宅にあった神棚
しかし、ご家族の話によると、私生活は意外なほど質素だったといいます。派手な生活を送るイメージとは裏腹に、質素な食事を好み、家族との時間を大切にしていたそうです。株式投資で巨万の富を築いたにも関わらず、贅沢とは無縁の生活。このギャップに、人間・加藤暠の複雑さを感じました。
逮捕、そして突然の死
2015年、加藤氏は相場操縦の疑いで東京地検特捜部に逮捕されました。34年の時を経て、再び検察当局と対峙することになったのです。持病の糖尿病が悪化し、保釈後には二度の足の切断手術を受け、2016年、急性心筋梗塞で75年の生涯を閉じました。
長年、沈黙を守り続けてきた加藤氏。その死後、ご家族が初めて口を開きました。そこで語られたのは、世間が抱いていたイメージとはかけ離れた、優しい父親としての姿でした。
家族が語る、本当の加藤暠
「父は、家庭では本当に優しい人でした」と語るのは、長男の恭氏。厳格なイメージとは裏腹に、子供たちには優しく、愛情深く接していたといいます。仕事の話は一切せず、休日は家族で過ごす時間を大切にしていたそうです。
料理上手な一面もあったという加藤氏。得意料理は、家族のために作る特製カレーだったそうです。週末になると、エプロン姿でキッチンに立ち、スパイスの香りを部屋いっぱいに漂わせていたといいます。
家族写真
1000億円を動かした男の、もう一つの顔
株式市場では「株の怪物」「仕手の本尊」と呼ばれ、恐れられた加藤氏。しかし、家庭では良き夫、良き父親としての一面を持っていました。巨額の資金を動かす辣腕トレーダーと、家族思いの優しい父親。この二つの顔を持つ男、加藤暠。その真の姿は、今もなお謎に包まれています。
まとめ:光と影を併せ持つ、稀代の相場師
加藤暠氏は、間違いなく昭和の金融史に名を刻む、稀代の相場師でした。1000億円以上もの資金を動かし、市場を翻弄したその手腕は、今もなお語り継がれています。しかし、その一方で、家族思いの優しい父親としての顔も持っていました。光と影を併せ持つ、複雑な人間性。それが、加藤暠という人物の魅力であり、謎なのかもしれません。