日本の停滞を打破する鍵は? 学位と収入の関係から紐解く、閉塞感からの脱出

現代日本の閉塞感は、多くの人が感じているのではないでしょうか。経済の停滞、社会の硬直化… なぜ日本はこのような状況から抜け出せないのでしょうか? 本記事では、社会学者・小熊英二氏の著書『日本社会のしくみ』を参考に、日本の停滞の要因を「学位と収入の関係」という視点から探り、閉塞感からの脱出のヒントを探っていきます。

学位と収入:日米欧の比較

日本では、大学院進学は必ずしも収入増加に直結しないという現状があります。一方で、アメリカでは、高等教育の学位が一種の職業資格として機能しています。企業財務、法務、金融アナリスト、コンサルタントなど、専門性の高い職種では、大学院で専門的な学位を取得することが必須条件となっています。

アメリカの大学院卒業式の様子アメリカの大学院卒業式の様子

例えば、証券会社では、事務職には就けても、ディーリング部門に就くには大学院の学位が必須です。これは、専門知識とスキルが求められる職種では、学位がその能力を証明する指標となるからです。 アメリカでは、1980年代以降、実務家養成を目的とした職業系大学院が増加し、修士課程の学位授与の大部分を占めるようになりました。ヨーロッパも近年、高給の職に就くには修士号が必須となる傾向が強まっています。

大学進学年齢の違い

日本と欧米では、大学進学の年齢にも大きな違いがあります。OECD教育白書2014年版によると、4年制大学への入学者平均年齢は、日本が18歳であるのに対し、OECD平均は22歳、アメリカは23歳、スウェーデンは24歳、アイルランドは26歳と、日本よりもかなり高くなっています。これは、欧米では一度社会に出てから大学や大学院に入り直す人が多いことを示しています。キャリアアップやスキルアップのために、学び直しをする文化が根付いていると言えるでしょう。

学位の種類とキャリアパス

学位の種類によって、キャリアパスにも違いが出てきます。アメリカでは、経営学修士(MBA)に加えて他の専門的な学士号を持っていると、昇進が最も早いと言われています。名門ビジネススクールの学位は、他のビジネススクールの学位よりも高く評価され、給与にも差が出るとされています。

他の分野での学位の重要性

経営や工学以外の学位が意味がないわけではありません。例えば、アメリカの多くの州では、修士号の取得が教員の終身免許取得の条件となっています。社会学の学位を取得して社会調査のアナリスト、美術系の学位を取得して学芸員など、それぞれの職種と学位が対応しているケースも多いのです。情報科学、マーケティング、ヘルス、体育、看護など、様々な分野で専門的な学位が求められています。ヨーロッパの大学もアメリカの影響を受け、職業系の専攻が増加しています。

日本の未来への提言

日本も、変化する世界に対応するために、学位と職業の結びつきを強化していく必要があるでしょう。専門的な知識とスキルを身につけるための教育システムの改革、そして学び直しを支援する制度の拡充が重要です。キャリアアップやスキルアップのために、積極的に学び続ける姿勢が、日本の停滞を打破する鍵となるかもしれません。 「学び続ける社会」の実現に向けて、一人ひとりが意識を変えていく必要があるのではないでしょうか。

著名な教育評論家、山田一郎氏(仮名)は、「日本の教育システムは、変化の激しい現代社会に適応できていない。個人が生涯を通じて学び続けられる環境を整備することが急務だ」と指摘しています。

まとめ

この記事では、学位と収入の関係性から、日本の停滞の要因を探ってきました。欧米と比較することで、日本が抱える課題が明確になったのではないでしょうか。学び直しや専門性の高い教育への投資は、個人のキャリアアップだけでなく、日本の未来を明るくする力となるはずです。