JA(農業協同組合)といえば、農家の生活を支える組織というイメージを持つ方が多いでしょう。しかし、その実態は必ずしもそうではないかもしれません。元日本農業新聞記者の窪田新之助氏が執筆した『農協の闇』では、JAの内部に蔓延する不正販売や自爆営業の実態が暴かれています。本記事では、その内容を元に、JAの抱える問題点を探っていきます。
経済事業の赤字と金融事業への依存
JAの本業は本来、農産物の販売や農業資材の供給といった経済事業です。しかし、多くのJAでは経済事業が赤字に陥っており、共済(保険)事業と信用(銀行)事業といった金融事業でその穴埋めをしているのが現状です。 これは、JAグループ全体で見ても同様の傾向が見られます。 全国農業協同組合中央会(JA全中)の資料によると、JAグループ全体の収益に占める金融事業の割合は年々増加しており、経済事業の割合は減少傾向にあります。
JA職員と農家の相談風景
長引く低金利時代において、金融事業の収益性も悪化の一途を辿っています。にもかかわらず、多くのJAは金融事業への依存から抜け出せずにいます。これは、JAの経営陣の多くが経営のプロフェッショナルではなく、地元の名士や有力者から選ばれることが多いため、抜本的な改革に着手できないという構造的な問題も背景にあります。
過大なノルマと不正販売
経営難を打開するために、JAは職員に過大なノルマを課しています。その結果、職員はノルマ達成のために不正販売や自爆営業といった行為に手を染めてしまうケースも少なくありません。例えば、顧客に不利益な共済契約への変更を勧誘したり、必要のない農薬や肥料を販売したりするといった事例が報告されています。
食の安全・安心コンサルタントの山田一郎氏(仮名)は、「JA職員へのプレッシャーは想像以上に大きい。ノルマ達成のために、倫理的に問題のある販売方法に手を染めてしまう職員もいるのは事実だ」と指摘しています。
組合員のための組織はどこへ?
本来、JAは農家の生活を支える協同組合であるはずです。しかし、経済事業の赤字、金融事業への依存、過大なノルマといった問題が山積する中で、JAは本来の目的を見失っているのではないでしょうか。組合員の声に耳を傾け、真に農家の利益になる事業を展開していくことが、JAの信頼回復には不可欠です。
JA改革の必要性
JAが抱える問題は、日本の農業の未来にも大きく関わります。JAの改革は、日本の農業を活性化させるためにも避けて通れない課題です。消費者も、農産物を購入する際に、JAの現状について関心を持つことが重要です。
この問題は複雑で、解決には多くの時間と労力が必要です。しかし、農家と消費者が協力し、JAの改革を後押ししていくことが、日本の農業の明るい未来につながるのではないでしょうか。