首相主催の「桜を見る会」について、政府は来春の中止を発表した。
安倍晋三首相や与党議員の後援会関係者が多く招待されているとの批判を受け、招待基準などを明確化するためだ。
判断は妥当である。本来の開催趣旨にふさわしい見直しを図らなくてはならない。
安倍首相は「私の判断で中止した」と述べた。菅義偉官房長官は招待プロセスの透明化、予算や招待人数を含めて全般的見直しを行うことを明らかにした。廃止はせず、再開したい考えだ。
見直しが必要なほど、あるべき姿から遠のいていたことについては、大いなる反省が必要だ。
東京・新宿御苑で行われている桜を見る会は、各界で功績・功労のあった人々を幅広く招待する内閣の公式行事だ。参加者は開催要領で約1万人とされているが、近年は5年前の約1万4千人から今年は約1万8千人へと肥大しており、野党は、安倍首相の地元後援会関係者らを多数招待しているなどとして批判していた。
天皇、皇后両陛下が各界の人々を招き、懇談される春秋の園遊会の招待者名簿は、宮内庁から発表されている。これに対し、今年の桜を見る会の招待者名簿を内閣府が破棄したとするなど、不透明さは否めなかった。
招待者について内閣官房や内閣府は政府・与党幹部や各省庁に推薦を依頼している。推薦依頼は首相、副総理らにも行っている。菅官房長官は記者会見で「長年の慣行」だと説明した。
国民民主党の玉木雄一郎代表は、旧民主党の鳩山由紀夫政権で開催された会で、党が各議員に推薦枠を割り振り、招待者を募ったことを明らかにしている。
だが税金の使途に国民の厳しい目が注がれる中で、不明確な「慣行」は、もはや通らない。
桜を見る会の歴史は、戦前の皇室主催の観桜会にさかのぼる。戦後の昭和27年に当時の吉田茂首相が首相主催の会として復活させた。歴史的に外国人らも多く招かれ、日本文化の対外発信などの意義も少なくない。あるべき姿を取り戻して再開すればいい。
国会は緊迫する香港情勢に何らの決議を出すこともせず、切迫する拉致問題の解決へ向けても議論は聞かれない。桜の問題に早急にけりをつけ、内外に山積する課題にあたってほしい。