【オーケストラ 神話のゆくえ】第二楽章・「待ち」から「街」へ 「個性」と「地域密着」…交流を支援につなげ

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 文化に潤沢にお金が注ぎ込まれたバブル期ならば、オーケストラはいくつあっても安泰だっただろう。だが、「実感なき景気回復」の今、国内のオーケストラは厳しいふるいにかけられようとしている。生き残りに必要なことは何か。聴衆の来場を期待する「待ち」の姿勢から「街」へと飛び出す勇気、そして「個性」と「地域密着」がキーワードになりそうだ。(安田奈緒美)

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◆求められるもの

 プロのオーケストラが10近くも乱立する関西では、存続をかけて熾烈な競争が繰り広げられている。

 10月下旬、土曜日の昼下がり。大阪フィルハーモニー交響楽団(大フィル)の拠点施設「大阪フィルハーモニー会館」(大阪市西成区)のメインホールに、ラテンの軽快なリズムが人気の楽曲「コパカバーナ」が響き渡った。ホール内は陽気な雰囲気に包まれ、奏者たちにも笑顔が浮かぶ。

 「プロの隣で最高の音を聴きながら演奏できるなんて夢のようです」。ドラムを叩いていた女性(50)=大阪市=は、顔をほころばせて話した。そう、女性はプロの楽団員ではなく、高校時代に吹奏楽部に所属していたという吹奏楽ファン。プロの吹奏楽団「オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラ」(旧大阪市音楽団)が行うイベント「月イチ吹奏楽」にほぼ毎回参加し、1日限りの即席オーケストラを満喫する。

 「前に進んでいく感じで叩いて下さい」。指揮台に立つシオンのホルン奏者、長谷行康さんがアドバイスを送ると、途端に躍動感あふれるリズムに生まれ変わった。「月に一度の楽しみです」と女性は話す。

 「地域密着」の試みとして、楽器を持っている人を対象にシオンが平成27年から始めたこのイベント。1回3千円の有料だが、大阪府内を中心に関西一円から毎回100人近くが参加し、時には定員オーバーになることも。「このイベントを通してシオンを知り、今では演奏会の追っかけをしています」と別の女性参加者は言う。


関西フィルハーモニー管弦楽団のコンサートに出演した神尾真由子さん(右)。演奏後に指揮者の藤岡幸夫さんとたたえ合った =大阪市北区のザ・シンフォニーホール(彦野公太朗撮影)
関西フィルハーモニー管弦楽団のコンサートに出演した神尾真由子さん(右)。演奏後に指揮者の藤岡幸夫さんとたたえ合った =大阪市北区のザ・シンフォニーホール(彦野公太朗撮影)
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 「自分たちがどういった人に求められているのか知る必要があった」と石井徹哉理事長はイベントの狙いを明かす。

 平成26(2014)年に大阪市営から民営化されるまで、楽団員は公務員。新規の仕事開拓やファン獲得などを意識したことはなかったが、立場は一変した。給与は月給制から歩合制となり、大阪城公園にあった練習場も追われて市内を転々。ようやく地下鉄検車場の一角にある、かつて倉庫として使われていた建物に落ち着いたが、音響設備が整っていないため、月イチ吹奏楽は大フィルの拠点施設を借りて行っている。

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