シンガーソングライターのあいみょんが、8月8日に発売された女性ファッション誌『GINZA』9月号の表紙を飾り、その「激変」ぶりが大きな話題を呼んでいます。同号は「部屋を飾る、新世代クラフト」をテーマに、あいみょんがものづくりが息づく北陸の地を巡る特集が組まれていますが、特に注目を集めたのは、これまでのイメージとは異なる彼女のビジュアルと、そこに確認された「タトゥー」でした。この露出は、ネット上で賛否両論を巻き起こし、日本におけるタトゥーへの根強い社会感情を改めて浮き彫りにしています。
眉毛とタトゥー:あいみょんの「激変」が呼んだ波紋
『GINZA』9月号の表紙を飾ったあいみょんは、普段の厚めの前髪で眉毛を隠すヘアスタイルから一転、眉毛を露出し、しかもかなり薄めに整えられた「激変」した姿で登場しました。この新たなビジュアルは、一瞬誰だかわからないほどのインパクトを与え、ファンやメディアの間で大きな驚きをもって報じられました。
しかし、それ以上にネットニュースのコメント欄を騒がせたのが、彼女の左腕に確認された人の形をしたような絵柄のタトゥーでした。このタトゥーの露出に対し、SNS上では即座に様々な声が噴出しました。
タトゥーに対する日本社会の根強い偏見
あいみょんのタトゥーを巡る反応は、日本のタトゥーに対する一般的な社会感情を色濃く反映しています。「昭和に生まれた私にはタトゥーへの先入観は今もなお消えません。若い方には理解があるのかも知れませんね。見た目で決めてしまうのは確かに如何なものかも知れませんが、タトゥーだけはどうしても受け入れられないのです」といった声に代表されるように、特に年配層からは依然として抵抗感が強いことが伺えます。
『GINZA』9月号の表紙に登場し、左腕のタトゥーと薄い眉毛のビジュアル激変が話題となったあいみょん
また、「タトゥーを入れている人は、返ってダサく感じる」「ドラえもんとか子供向けの曲も作るなら入れるべきでは無かったでしょうね」といった批判的な意見も多数寄せられました。あるスポーツ紙記者は、「海外アーティストの体じゅうに入ったがっつりタトゥーに比べれば、あいみょんさんのは可愛いものなんです。とはいえ、日本ではまだまだタトゥーへの風当たりは強いと言えます。実際、フィットネスクラブや大衆浴場など、公共の場ではタトゥーが入っていると利用を制限されることが多いですから」と語り、タトゥーが社会的に受け入れられにくい現状を指摘しています。たとえ控えめなデザインであっても、日本においては未だに偏見の対象となりやすい傾向があるのです。
韓国芸能界に見るタトゥー表現の現実
タトゥーへの反応は日本に限りません。地理的に近い韓国もまた、タトゥーに対する拒否反応が日本と類似しているとされています。昨年12月3日、日本の人気音楽ユニットYOASOBIが韓国の人気音楽番組『THE SHOW』(SBS M、SBS FiL)に出演しパフォーマンスを披露した際、メンバーのAyaseさんのタトゥーが入った両腕にはモザイクがかけられました。
韓国の芸能事情に詳しい関係者によると、「韓国の主要なテレビ局では未成年視聴者への影響を懸念して、タトゥーを映さないように明確に規定しています。韓国の芸能人やアーティストで体の一部にタトゥーを入れている人は多くいますが、そういう人が出演する場合はカメラに映らないようにその箇所を避けて撮影するか、モザイクをかけられることが多いです。生放送などで対処が難しい場合は事前にテーピングや肌色のインナー、メイクなどで隠すようにしています」とのこと。これは、表現の自由と青少年保護という観点から、メディアにおけるタトゥーの取り扱いが厳しく制限されている現実を示しています。
変化の兆しと残された課題:タトゥーの市民権に向けて
あいみょんのタトゥーに対し、残念がる声がある一方で、「自分の身体だ、好きにしたからいい」「タトゥーの害は本人が受けるものだから、他人がとやかく言うことではない」といった支持の声も上がっています。個人の身体表現の自由を尊重する意見と、社会的な規範や伝統的な価値観との間で、タトゥーを巡る議論は常に揺れ動いています。
近年、多様性への理解が進む中で、タトゥーに対する社会の認識も徐々に変化の兆しを見せているものの、フィットネスクラブや温浴施設など、依然として多くの公共の場で利用制限が設けられているのが現状です。あいみょんのような影響力のあるアーティストの露出は、タトゥーをよりオープンな議論の場に引き出すきっかけとなるかもしれませんが、日本でタトゥーが真の意味で市民権を得るには、いまだ時間を要するでしょう。社会の意識変革と、それに対応する制度や慣習の見直しが、今後の課題として残されています。