近年、高齢化が進む日本では、認知症が大きな社会問題となっています。物忘れがひどくなる、性格が変わるなど、認知症の症状は多岐に渡ります。2022年の時点で患者数は約443万人、65歳以上の8人に1人が罹患しているという現状です。そして2040年には約584万人まで増加すると予測されており、ますます身近な病気となることが懸念されています。この記事では、特に女性に多いとされるアルツハイマー型認知症の原因とその予防策について、専門家の意見を交えながら分かりやすく解説します。
認知症の種類とアルツハイマー型の特徴
認知症には様々な種類がありますが、中でもアルツハイマー型認知症は全体の約60~70%を占めており、最も患者数が多いタイプです。その他には、脳梗塞などが原因で起こる血管性認知症や、異常なタンパク質の蓄積が原因となるレビー小体型認知症などがあります。
なぜ女性に多い?寿命だけが原因ではない!
アルツハイマー型認知症で特に注目すべき点は、男女間の有病率の差です。多くの研究結果から、アルツハイマー病患者の約3分の2が女性であることが分かっています。 これまで、女性は男性よりも平均寿命が長いため、認知症を発症するリスクも高くなると考えられてきました。確かに2023年のデータでは日本人女性の平均寿命は87.1歳、男性は81.1歳と約6年の差があります。しかし、専門家の間では、寿命の差だけではこの男女差を説明するには不十分であるという見方が強まっています。
アルツハイマー病患者の脳画像
女性ホルモン「エストロゲン」の減少が鍵を握る
女性は閉経を迎えると、女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌が急激に減少します。エストロゲンは生殖機能だけでなく、脳の健康維持にも重要な役割を果たしています。具体的には、脳の神経細胞がブドウ糖を取り込むのを助け、脳の主要なエネルギー源であるアデノシン三リン酸(ATP)の産生をサポートする働きがあります。
脳のエネルギー不足と認知機能低下
人間の脳は体の中で最もエネルギーを消費する臓器であり、全体のエネルギー消費の約20%を占めています。記憶や判断などを司る大脳皮質や海馬は特にブドウ糖に依存しているため、エネルギー供給が滞ると認知機能の低下に繋がりやすくなります。エストロゲンが急激に減少すると、脳はエネルギー不足に陥りやすくなります。
「エストロゲンの減少により、脳は代替エネルギー源として白質(脂質を多く含む脳の構造)を使い始めます。白質の成分であるミエリン(神経を包む脂質の鞘)は、燃料として利用されると弱くなり、神経伝達の効率が低下します。これがアルツハイマー病のリスクを高める可能性があると考えられています。」と、認知症専門医の佐藤先生(仮名)は指摘します。
予防と対策:健康的な生活習慣を心がけよう
閉経後の女性はエストロゲンの減少による影響を受けやすいですが、だからといって諦める必要はありません。バランスの良い食事、適度な運動、質の高い睡眠など、健康的な生活習慣を維持することで、認知機能の低下を予防し、脳の健康を保つことが可能です。
専門家からのアドバイス
「日常生活の中で、脳を積極的に使うことも大切です。読書や計算、新しい趣味に挑戦するなど、知的活動を続けることで認知機能の維持・向上に繋がります。また、社会的な繋がりを維持することも認知症予防に効果的です。」と佐藤先生はアドバイスしています。
まとめ:認知症予防は今から始めよう
認知症は誰にでも起こりうる病気ですが、早期発見・早期治療が重要です。この記事で紹介した情報が、皆様の認知症予防の一助となれば幸いです。ご自身やご家族の健康のために、今からできることから始めてみましょう。