人類史の常識を覆す大発見!ネアンデルタール人とデニソワ人、私たちのご先祖様との意外な関係

近年、ゲノム研究の目覚ましい進歩により、私たちの祖先に関する常識が次々と覆されています。かつてはホモ・サピエンスが唯一生き残った人類と考えられていましたが、実は他の古代人類との交雑があったことが明らかになり、私たちの遺伝子の中に彼らの痕跡が刻まれているのです。本記事では、国立科学博物館の篠田謙一館長へのインタビューを基に、謎に包まれた人類史の最新知見をご紹介します。

ホモ・サピエンスだけが生き残ったのではない

従来の人類史では、ホモ・サピエンスが他の古代人類を駆逐し、唯一生き残った種とされてきました。しかし、近年のゲノム研究はこの定説を覆し、ホモ・サピエンスがネアンデルタール人やデニソワ人といった他の古代人類と交雑していた事実を明らかにしました。

ネアンデルタール人と現代人の頭蓋骨の比較ネアンデルタール人と現代人の頭蓋骨の比較

篠田館長は、「以前はホモ・サピエンスが他の人類を滅ぼしたと考えられていましたが、実際には両者が交わり、その子孫が現代まで続いていることが分かっています」と述べています。この驚くべき発見は、2022年にノーベル生理学・医学賞を受賞したスバンテ・ペーボ博士を中心とする古代ゲノム研究の成果によるものです。

謎の人類「デニソワ人」とは?

ネアンデルタール人は約4万年前に絶滅したとされていますが、私たちのゲノムには1〜4%程度、ネアンデルタール人由来の遺伝子が受け継がれています。さらに、2008年にはロシアのデニソワ洞窟で発見された指の骨から、ネアンデルタール人でもホモ・サピエンスでもない未知の人類のDNAが検出されました。これが「デニソワ人」と呼ばれる新たな古代人類です。

デニソワ洞窟の入り口デニソワ洞窟の入り口

デニソワ人の正体は未だ謎に包まれていますが、ゲノム解析によって、現代人の一部にもデニソワ人由来の遺伝子が受け継がれていることが判明しています。特に、チベット高原に住む人々は、高地への適応に有利なデニソワ人由来の遺伝子を持っていることが知られています。

古代ゲノム研究が解き明かす人類進化の謎

古代ゲノム研究は、私たち人類の進化の歴史を解き明かす上で重要な役割を果たしています。ネアンデルタール人やデニソワ人との交雑は、ホモ・サピエンスが様々な環境に適応し、進化していく上で大きな影響を与えたと考えられます。

例えば、ネアンデルタール人由来の遺伝子は、免疫機能や皮膚、毛髪の形成に関わっていることが分かっています。また、デニソワ人由来の遺伝子は、高地への適応や酸素運搬能力に関与していることが示唆されています。

これらの発見は、人類進化の複雑さを改めて示すとともに、私たち自身のルーツを理解する上で貴重な手がかりを提供しています。今後の研究の進展により、古代人類とホモ・サピエンスの関係、そして私たち自身の進化の過程がさらに明らかになることが期待されます。