ガザ飢餓深刻化:4歳女児、栄養失調で死亡 – 人道支援の遅延が犠牲者増やす

パレスチナ自治区ガザ中地区で、4歳のラザン・アブ・ザヘルちゃんが7月20日、飢餓と栄養失調による合併症で命を落としました。骨と皮ばかりになったその小さな遺体は、石板の上に安置されました。この悲劇は、ガザ地区が直面する深刻な人道危機を改めて浮き彫りにしています。

ガザ地区で飢餓により死亡した4歳のラザン・アブ・ザヘルちゃんの遺体が布に包まれ運ばれる様子ガザ地区で飢餓により死亡した4歳のラザン・アブ・ザヘルちゃんの遺体が布に包まれ運ばれる様子

悲劇の連鎖:ガザでの飢餓死が加速

パレスチナ保健省によると、2023年10月に現在の紛争が始まって以来、ガザでは少なくとも76人の子どもと10人の大人が栄養失調により死亡しました。世界保健機関(WHO)は、そのほとんどが今年3月以降、イスラエルによるガザへの援助物資搬入阻止に起因すると指摘しています。

ラザンちゃんは、過去3日間で命を落とした少なくとも4人の子どものうちの一人でした。最年少の犠牲者はわずか生後3カ月。保健省は、過去24時間で飢餓により死亡した住民は18人に上ると発表し、状況の急速な悪化を示しています。

ラザンちゃんが初めて取材された6月23日の時点では、既に深刻な飢餓と衰弱状態にありました。母親のタハリール・アブ・ダヘルさんは、ミルクを買うお金がないと語り、ガザではミルク自体がほとんど手に入らない状況でした。「戦争前はとても元気だった。けれど戦争後は栄養不良で健康状態が悪化した。元気付けてあげられるものは何もなかった」と母親は語っています。ラザンちゃんは入院から27日間、懸命に生きようとしました。

人道支援の深刻な不足と国際社会への訴え

ガザの飢餓は、イスラエルが3月に封鎖を開始して以来、人道援助物資の搬入が激減したことにより悪化の一途をたどっています。5月下旬に一部の封鎖は解除されたものの、支援団体は、ガザに届く援助物資の量が人口を支えるには到底足りていないと指摘しています。

イスラエル側は、ガザへの援助物資搬入を阻止する理由として、イスラム組織ハマスが物資を盗んでいるためだと主張しています。しかし、ハマスはこの主張を否定しています。

3月以来の食料の欠乏は、ただでさえ逼迫していた病院に、さらに多くの患者を押し寄せています。ラザンちゃんが死亡したアクサ病院のハリル・ダクラン医師は7月20日、「ガザの飢餓は最悪の局面を迎え、前例のない国際社会の沈黙の中で壊滅的なレベルに達している」と訴えました。ダクラン医師は、現在死にかけている乳幼児たちは「1度は爆撃と殺害によって、そして今度はミルクとパンを奪われて」、幼少期を2度奪われたと述べ、その悲劇を強調しました。

現場からの絶望的な声:医療と食料の危機

パレスチナ保健省は19日、「年齢を問わず前例のない数の市民が飢えに苦しみ、重度の疲労・疲弊状態で救急病棟に搬送されている」「飢えのために衰弱しきった数百人が差し迫った死の危険に瀕している。彼らの体はもうこれ以上耐えられない」と声明を発表しました。

ガザで活動しているNGOは7月20日、現地スタッフの言葉を伝えました。「私たちの顔は変わり、体はやせ衰えた。極度の衰弱のためにもう、お互いを認識できなくなった。まるでだんだん消えて死んでいくかのように」。

南部ハンユニスにある野戦病院のスハイブ・ハムス院長は、病院に搬送されてくる患者の状態について、「薬以前にとにかく食べ物が必要だ。体はもうこれ以上耐えられない状態にあり、全員が死の危険に瀕している」と語っています。さらに、「今日は『ワールド・セントラル・キッチン』から医療スタッフへの食事の提供が止まった。これまではコメだけが届いていた。医師たちは自宅でも病院でも食べ物がない状態で24時間働いている。人々が餓死している」と、医療従事者自身の厳しい状況も明かしました。ワールド・セントラル・キッチンも、ガザで温かい食事を提供するために必要な材料を使い果たしたことを確認しており、人道支援活動の限界が近づいている現状を示唆しています。

ガザの住民、特に子どもたちが飢餓に苦しみ、次々と命を落としている現状は、国際社会が早急に対応すべき緊急の人道危機であることを改めて示しています。事態の悪化は止まらず、さらなる犠牲者が出ることが懸念されています。