サムスン電子が、約30年間守り抜いてきたDRAM市場のシェア首位から陥落しました。AI競争の激化の中、SKハイニックスにその座を明け渡すこととなりました。1992年にDRAM市場で初めて首位を獲得して以来、メモリー半導体業界の王者として君臨してきたサムスンにとって、これは大きな転換点と言えるでしょう。
王座陥落の背景:AI時代の波に乗り遅れたか?
香港の市場調査会社カウンターポイントによると、2024年第1四半期(1~3月)の世界DRAM市場におけるサムスンの売上シェアは34%。SKハイニックスの36%に及ばず、首位の座を明け渡しました。市場調査機関の集計でサムスンがDRAM首位を逃したのは、1992年以来初めてのことです。
これまで「超格差」と呼ばれる圧倒的な技術競争力と大規模な生産量を武器に、メモリー半導体業界を牽引してきたサムスン。DRAMシェアが40%を下回ることは稀で、減産時以外ではほぼ首位を維持してきました。しかし、AI時代への対応の遅れが、今回の結果に繋がったと見られています。
DRAMチップの拡大図
AI半導体分野での苦戦、HBM供給の遅れが響く
サムスンは、高帯域幅メモリー(HBM)をはじめとするAI半導体分野で技術競争力の不足が指摘されており、昨年からシェア下落の兆候が見られていました。HBMはAIチップの性能を左右する重要な部品であり、この分野で後れを取ったことが、首位陥落の大きな要因と言えるでしょう。
HBM市場では、SKハイニックスが先行しており、既に2023年3月にはAIチップ大手のNVIDIAに第5世代HBM(HBM3E)の供給を開始しています。一方、サムスンはHBMの供給で遅れを取っており、これが市場シェアに大きな影響を与えていると分析されています。
次世代DRAM開発競争でも後れ?巻き返しはなるか
業界関係者の間では、サムスンが当面の間、首位の座を取り戻すのは難しいとの見方が強まっています。次世代DRAMに不可欠な11~12ナノメートル(nm)級工程においても、サムスンはSKハイニックスに遅れを取っているとの指摘があります。
サーバー用メモリーモジュール
フード・コンサルタントの山田一郎氏は、「AI分野の進化は凄まじく、技術革新のスピードが求められる。サムスンは、過去の成功体験に囚われず、迅速な対応が必要だ」と述べています。
30年続いたサムスンの時代は終焉?今後の動向に注目
1983年の「東京宣言」で半導体事業への参入を表明し、わずか9年でDRAM市場の首位を獲得するという快挙を成し遂げたサムスン。1993年にはNAND型フラッシュメモリーを含めたメモリー市場全体でも首位に立ち、長きにわたり業界をリードしてきました。
カウンターポイントは、「2024年第2四半期もDRAM市場のメーカー別シェアは第1四半期とほぼ同じになるだろう」と予測しています。サムスンが今後どのように巻き返しを図るのか、その動向に注目が集まります。