インド旅行の魅力は、その悠久の歴史と文化、そして多様な人々の暮らしに触れられること。しかし、同時に衛生環境や宗教観念の違いに戸惑う旅行者も多いのではないでしょうか。本記事では、筆者が実際にインドを旅して目の当たりにした、日本人には理解しがたい出来事や文化の違いについて詳しくご紹介します。
殺生を禁じる宗教観と政治家の暗殺事件
ムンバイで滞在中、ショッキングなニュースを目にしました。地方の有力政治家が何者かに暗殺されたというのです。地元新聞や識者の解説によると、犯人は刑務所の仲間で、黒幕に雇われたとされています。驚くべきは、その動機。なんと、政治家が狩猟をしたことに対する、狂信的なヒンドゥー教徒の反発が原因とみられているのです。ヒンドゥー教では殺生を禁じており、狩猟は冒涜行為と捉えられることもあるとのこと。宗教観念が政治にまで影響を及ぼすインド社会の複雑さを垣間見た瞬間でした。
政治家暗殺のニュース
狂犬病の脅威と野犬問題への意識
ハンピのホステルで、インド人スタッフや他の旅行者と雑談していた時のこと。「インドでは狂犬病で毎年多くの人が亡くなっているのに、なぜ野犬対策がされないのか?」と尋ねたところ、意外な反応が返ってきました。「インドにはもっと切実な問題がたくさんある。狂犬病で亡くなる人数は話題にもならない」というのです。外務省の海外安全ホームページにも、インドでは年間2万人が狂犬病で亡くなっていると警告されているにも関わらず、です。先進国では野犬を捕獲・殺処分することもあると説明したところ、殺生は許されない、と強い反発を受けました。「人間の命よりも宗教上の戒律が優先されるのか?」と、改めて文化の違いを痛感させられました。
街を埋め尽くす野良牛と衛生問題
インドの街を歩いていると、至るところに野良牛の姿が見られます。そして、当然ながら糞尿も。私見ですが、これがインドの街の不衛生さの原因の一つではないかと感じています。行政が野良牛を保護し、清潔な環境を作れば、街の景観も大きく変わると思うのですが…。この考えをインド人に話してみたものの、全く共感を得られませんでした。どうやら、彼らは野良牛の糞尿を「当たり前のもの」として認識しているようです。ムンバイ在住のIT技術者に尋ねたところ、「野良牛はごく少数で、ほとんどの牛は飼育されている」という答えが返ってきました。しかし、ナショナル・グラフィック誌の記事によると、インドには500万頭の野良牛が存在し、農作物被害や交通事故を引き起こしているというのです。聖なる牛を殺すことは法律で禁止されているため、牛乳を出さない雄牛は捨てられ、野良牛が増加しているとのこと。牛を神聖視する文化と、現実的な問題との間で揺れ動くインド社会の現状を目の当たりにしました。
野良牛
野良牛の糞
まとめ
インド旅行は、刺激的で忘れられない体験となるでしょう。しかし、同時に文化や価値観の違いに直面することも少なくありません。事前の情報収集や心の準備をしっかり行い、異文化への理解を深めることが、より充実したインド旅行の鍵となるでしょう。