中国からのレアアース(希土類)7種類の輸出が事実上停止したというニュースは、世界経済に大きな波紋を広げています。2025年4月11日、ロイター通信が報じたこのニュースは、米中貿易摩擦の激化を背景に、中国がレアアースを戦略物資として利用する姿勢を改めて示すものとして注目を集めています。
レアアース輸出停止の背景と現状
中国商務省は4月4日、防衛、エネルギー、自動車など幅広い産業で使用される7種類のレアアースを輸出規制の対象に追加すると発表しました。これにより、中国のレアアース輸出業者は、輸出ごとに政府へのライセンス申請が義務付けられることとなりました。しかし、申請の承認プロセスは不透明で、認可までには数週間から数ヶ月かかる可能性もあると言われています。
中国・江蘇省連雲港の港
関係者によると、輸出停止は4月4日から始まっており、既に多くの企業が影響を受けているとのことです。レアアース取引に詳しい専門家、田中一郎氏(仮名)は、「今回の輸出停止は、中国がレアアース供給を武器化していることを明確に示している」と指摘しています。
世界経済への影響
中国は世界のレアアース生産の約90%を占めており、今回の輸出停止は世界経済に大きな影響を与える可能性があります。特に、ハイテク製品やクリーンエネルギー技術に不可欠なレアアースの供給不足は、関連産業に深刻な打撃を与えることが懸念されます。
企業への影響
レアアースの供給不足は、既に多くの企業に影響を及ぼしています。特に、ハイテク製品メーカーや自動車メーカーは、レアアースの調達に苦労しているという声が上がっています。一部の企業は、代替材料の開発や供給先の多様化を検討し始めていますが、短期間での対応は難しいと見られています。
各国政府の対応
各国政府も、今回の事態を深刻に受け止めています。アメリカ政府は、中国のレアアース輸出規制を不当な貿易慣行と批判し、WTOへの提訴も視野に入れていると報じられています。日本政府も、レアアースの安定供給確保に向けた取り組みを強化する方針です。
今後の展望
中国のレアアース輸出停止が長期化すれば、世界経済への影響はさらに深刻化することが予想されます。レアアースの供給不足は、ハイテク製品の価格上昇や生産の遅延につながる可能性があります。また、クリーンエネルギー技術の普及にも影響を与え、地球環境問題への取り組みにも支障が出る可能性も懸念されます。
今後、中国政府がどのような対応を取るかが注目されます。同時に、各国政府や企業は、レアアースの供給源の多様化や代替材料の開発など、中長期的な対策を講じる必要があるでしょう。