1990年の初放送以来、人気の若手から経験豊富なベテランまで600人近くの俳優たちが摩訶不思議な世界の住人を演じてきたオムニバスドラマシリーズ『世にも奇妙な物語』。
■【画像】こんなふうに撮ってるの? 『世にも奇妙な物語』恐怖シーンの裏側■
今回注目していくのは、様々なジャンルの作品がある中でもっとも俳優の演技力が求められるミステリー・ホラー回である。想像を超える恐怖や世にも奇妙な世界に飲まれていく様子を、実力派の俳優たちが臨場感たっぷりに演じるからこそ、我々視聴者もまたテレビを通じて「世にも奇妙な世界」に誘われるのだ。
時代を代表する大物俳優たちが出演したホラー回も数多く、どれも注目作ばかり。その中から、今回は特に印象的な3作品をピックアップして振り返ってみたい。
※本記事には作品の内容を含みます
■織田裕二さんの迫真の演技が恐怖を煽る『ロッカー』
まずは、織田裕二さんが出演を務めた『ロッカー』から。1990年放送の第1シリーズに放送されたにも関わらず、今なお「怖い」という声が絶えない番組初期の名作だ。演じていたのは産業スパイの悟。明るい主人公役が多い織田さんには珍しく、悪役である。
あるとき悟は、新型バイオセンサーの設計図を盗むために研究所に潜入し、鉢合わせた研究員・佐口邦夫(段田安則さん)を殺害してしまう。警備員が近づいてきて焦った悟は、咄嗟に開いていた佐口のロッカーの中に隠れるが、この判断が彼の人生を狂わせることになる。
警備員がいない隙に逃げようとするもロッカーが開かず、ついには現場検証が始まってしまうのだ。ロッカーの隙間から覗く悟の目に飛び込んできたのは、不気味な笑みを浮かべる佐口の死体。段田さんの表情にゾクゾクするシーンだ。
刑事が来て万事休すかと思われたその時、廃棄のロッカーを回収しにきた作業員が悟のロッカーを持ち出す。悟が安堵したのも束の間、廃棄物処理場に到着し、さらなるピンチに見舞われる。クレーンで吊るされたロッカーの中から「助けて」と叫ぶも、その声は作業員に届かずプレス機が迫ってくる。
その瞬間、佐口の顔がフラッシュバックし悟は再びロッカーの中で目覚めた。が、無情にも先ほどと同じようにクレーンが動き出しロッカーは地面に叩きつけられてしまう。悟は衝撃で開いた扉の隙間から手を伸ばすが作業員は気づかない。
「助けて! 誰かたすけ……」と、悟の声をかき消すように、プレス機はロッカーを押しつぶしてしまう。
ロッカーが開かないというシチュエーションだけでも心臓が締めつけられてしまうのに、そこにプレス機が迫ってくるのはあまりにも怖い。そして、恐怖、安堵と様々な表情をロッカーの中だけで演じた織田さんの名演により、さらなる恐怖感が視聴者を襲うエピソードである。