公文書の「,」なぜ? 半世紀以上、見直し検討





コンマと読点

 公文書の読点に使われている「,」(コンマ)について、文化庁が見直しの検討を始めた。民間では広く「、」(テン)で記載されているが、中央省庁では昭和27年の通知に従い、コンマで書くようルール化されている。ただ、半世紀以上を経て、省庁でもテンを使う文書が増加、専門家会議で議論が進んでいる。

 コンマの使用は27年4月、当時の官房長官が各省庁の事務次官に通知した「公用文作成の要領」で定められた。戦後、それまで縦書きで「行フモノトス」など文語調だった公文書の難解さなどが問題となり、「感じのよく意味の通りやすいものとするとともに、執務能率の増進を図る」として、要領ができた。

 公文書は「なるべく広い範囲」で左横書きとし、句読点にはコンマと「。」(マル)を使うと明記。文化庁国語課によると、議論の過程では戦後広まった英語に倣い、句点に「.」(ピリオド)の使用も検討されたが、見やすさからマルに落ち着いたという。

 常用漢字表など一部改訂された部分以外、句読点を含む要領のルールは現在も効力を持つ。法令や各団体への通知など公文書のほか、学校教科書でもコンマが使われている。しかし、要領に強制力はなく、一般社会ではテンが広まった。

 テンの使用は公的機関にも浸透しつつある。平成24年、省庁や地方自治体を対象にしたアンケート結果によると、コンマとマルで統一している省庁は4つ、都道府県・政令市では7つ。テンとマルを統一的に使う省庁・自治体が大勢だった。

 「パソコン入力が広まった1990年代から、コンマは徐々に廃れていった」。霞が関勤務が長い官僚は振り返る。日本語入力ソフトの基本設定がテンとなっていることも、その一因となっている可能性がある。

 インターネットではテンの使用が広がり、公式サイトのトップページでコンマを使い続けるのは裁判所や法務省、宮内庁、外務省など一部にとどまる。

 文化庁は文化審議会国語分科会の小委員会で、コンマについて問題提起しており、専門家が来春にも結論を出す見通しだ。



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