東南アジア歴訪を開始した中国の習近平国家主席。最初の訪問国ベトナムでは、最高指導者と会談し、経済連携強化で一致しました。米国の「相互関税」発動後初の外遊となる今回の歴訪。その背景には、米中貿易摩擦の激化と、東南アジア諸国との関係強化を目指す中国の戦略が透けて見えます。
貿易摩擦激化の中、東南アジア重視の姿勢を鮮明に
2025年4月14日、習近平国家主席はベトナム、マレーシア、カンボジアの東南アジア3カ国歴訪を開始しました。米国との貿易摩擦が激化する中、中国にとって東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国との関係強化は喫緊の課題となっています。今回の歴訪は、中国が東南アジアを重視する姿勢を改めて示すものと言えるでしょう。
ベトナムのトー・ラム共産党書記長(右隣)を迎える中国の習近平国家主席(中央左)
ベトナムとの連携強化:一帯一路構想を軸に
最初の訪問国であるベトナムでは、トー・ラム共産党書記長と会談。中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に基づく協力を推進することで合意しました。具体的には、ベトナム製品の中国への輸出促進、中国企業によるベトナムへの投資拡大、生産・サプライチェーンの強化などが挙げられます。国際経済アナリストの田中一郎氏は、「ベトナムとの連携強化は、中国にとってASEAN市場への足掛かりを築く上で重要な一歩となるでしょう」と分析しています。
米国の「一方的ないじめ行為」に反対を表明
習主席は会談で、米国の「相互関税」を念頭に、「一方的ないじめ行為」への反対を表明。世界の自由貿易システムと産業・サプライチェーンの安定性維持の重要性を訴えました。これは、米国の一方的な保護主義政策に対抗する姿勢を鮮明にしたものと言えるでしょう。
習近平国家主席
米国の思惑と東南アジアの対応
米国はベトナム、マレーシア、カンボジアに対し、それぞれ46%、24%、49%の「相互関税」を課すと発表しました。しかし、これら3カ国を含むASEAN諸国は、中国のような対抗措置は取らず、対話を継続する姿勢を示しています。専門家は、米国が関税引き上げ回避と引き換えに、東南アジア諸国から譲歩を引き出そうとしていると見ています。
中国の狙い:不利な「ディール」阻止
習主席の今回の歴訪には、米国との間で中国に不利な「ディール(取引)」が結ばれないよう、3カ国に働きかける狙いもあるとみられています。東南アジア諸国との関係強化を通じて、米国の圧力に対抗しようとする中国の戦略が、今後どのように展開していくのか注目されます。