なぜ牛乳が安い?家計に優しい背景に潜む業界の苦悩

牛乳の価格が最近下がっていると感じている方は多いのではないでしょうか?飼料価格の高騰で酪農家の経営は厳しいはずなのに、なぜ牛乳は安売りされているのでしょうか?jp24h.comでは、この疑問を解消すべく、牛乳価格の謎に迫ります。

スーパーの戦略:牛乳で集客

牛乳の値下がりが顕著になったのは2023年8月の飲用牛乳の値上げ以降。1リットルあたり10円値上がりし、220~230円程度で販売されるのが一般的でした。しかし、都内スーパーの価格調査によると、多くの店で200円を下回る価格で販売されていることが判明。関東の乳業メーカーやプライベートブランド(PB)製品が178~199円で販売されているケースも見られました。

東京都内のスーパーで販売されている牛乳東京都内のスーパーで販売されている牛乳

デジタルチラシサービス「トクバイ」を運営するくふうカンパニーのデータ分析担当者は、「卵など高騰した食品が特売をしにくくなり、代わりに牛乳を掲載する例が増えた」と指摘。同社のデータによると、2024年11月から3月にかけて牛乳の掲載商品数は1.5倍に増加。一方で、鳥インフルエンザの影響で供給が不安定な卵は35%減少しました。卵での集客が難しくなったため、牛乳を安売りするスーパーが増えたのです。

誰が負担しているのか? 隠れたコスト

牛乳の原料価格は、乳業メーカーと生産者団体との年1回の交渉で決定されます。価格改定がない限り、原料価格は変動しません。つまり、安売りのコストは生産者以外が負担していることになります。

Jミルクは、「乳業メーカーか小売店が負担している可能性がある」と見ています。取材に対し、店頭で安売りされていた関東の乳業メーカー複数社は、小売店への卸価格を下げていないと回答。

全国スーパーマーケット協会は、「小売店が利益を削っている可能性がある」と分析。スーパーの売上は伸びているものの、価格上昇により販売数量は減少傾向にあり、集客の重要性が増しています。「販売点数の多い牛乳で値頃感を演出し、来店を促す店がある」とのこと。

中小スーパーの苦悩

都内で2店舗を経営するスーパーイズミは、1年以上牛乳を特売していません。五味衛社長は、「大手のように大量仕入れで安くできない。安売りは困る」と苦悩を明かします。大手スーパーの安売り戦略は、中小スーパーにとって大きな負担となっているのです。

牛乳の安売りは、消費者にとっては嬉しいものの、酪農家や中小スーパーにとっては厳しい状況を生み出しています。食料品価格の高騰が続く中、牛乳の価格動向に今後も注目していく必要がありそうです。