韓国で発生した過去最悪規模の山火事。甚大な被害をもたらしたこの災害の中、ゴルフ場が営業を継続していたことが明らかになり、批判が殺到しています。一体なぜこのような事態が起きたのでしょうか?本記事では、その背景にある韓国社会の「大丈夫精神」について、専門家の意見も交えながら詳しく解説します。
山火事の猛威とゴルフ場営業継続の波紋
韓国の山火事の様子
2025年3月、韓国の慶尚南道と慶尚北道などで発生した山火事は、死者31名、負傷者44名、住宅被害4000棟以上、焼失面積は約4万8000ヘクタール(東京23区の3/4)という未曾有の被害をもたらしました。韓国政府も「過去最悪の被害」と発表するほどの甚大な災害となりました。
山火事現場付近で働くキャディーの投稿
そんな中、慶尚北道のあるゴルフ場が、山火事が迫る中で営業を続けていたことが発覚し、非難が集中しています。ゴルフ場で働くキャディーがSNSに「勤務中に山火事で死ぬところだった」と動画を投稿したことで、この事態が明るみに出ました。
キャンセル不可のゴルフ場、その背景にある「大丈夫精神」とは?
山火事の危険があるにも関わらずキャンセルできないゴルフ場
キャディーの証言によると、山火事発生前日に、ゴルフ場近くの高速道路が規制されるという災害メールが届いていたにも関わらず、火事当日は55組もの客が来場。ゴルフ場は「予約のキャンセルができない」という規定だったため、営業を強行したとのことです。
職員からプレーを促される様子
営業中、煙や灰が降り始め、火の手が迫る中で客と対応していたキャディーに対し、職員はプレーを続けるよう促したといいます。最終的にゴルフ場は全焼し、キャディーが担当していた客は払い戻しも受けずに逃げてしまったとのことです。
コリア・レポート編集長 辺真一氏
『コリア・レポート』編集長の辺真一氏は、この事態について、韓国社会に根付く「大丈夫精神」(ケンチャナ)が背景にあると分析しています。「まさか自分がこうはならないだろう」という楽観的な考え方が、危機管理意識の欠如につながった可能性を指摘しています。また、ゴルフ場経営者は、午後3時に営業を中断した後、キャディーを呼び出して夜10時まで消火活動をさせたとのこと。早期の対策が重要だったにも関わらず、後手に回った結果、ゴルフ場は全焼してしまったのです。
この事例は、災害発生時における適切な対応の重要性を改めて示しています。危機管理意識を高め、「大丈夫精神」に陥ることなく、冷静な判断に基づいた行動が求められます。
専門家の中には、「韓国におけるレジャー産業の構造的な問題も影響している」と指摘する声もあります。例えば、レジャー施設の経営者側に、顧客満足度を最優先するあまり、安全対策がおろそかになる傾向があるという指摘です。今回のゴルフ場のように、キャンセル規定を厳格化することで顧客のキャンセルを抑制し、収益を確保しようとする姿勢が、結果的に人命を危険にさらす事態を招いてしまったと言えるでしょう。
今回の山火事とゴルフ場営業継続の問題は、韓国社会全体の防災意識向上を促す契機となるはずです。
「大丈夫精神」の功罪について、議論を深める必要があるでしょう。