電気自動車(EV)市場を席巻する中国勢の勢いが止まらない。世界最大のバッテリーメーカーであるCATLが、わずか5分の充電で520kmの走行を可能にする革新的なバッテリー技術を発表した。これは、同じく中国のバッテリー・EV大手BYDが3月に発表した「5分充電で400km走行」という技術をわずか1ヶ月で上回る快挙だ。韓国企業は全固体電池などの次世代技術開発を加速させなければ、中国企業に大きく遅れをとる可能性がある。
中国発!驚異の急速充電技術
上海モーターショーに先立ち、CATLは「神行バッテリー」と名付けられた第2世代バッテリーを発表。このバッテリーは、わずか5分の充電で520kmの走行を可能にする。さらに、マイナス10度の低温環境下でも15分で80%まで充電できるという驚異的な性能を誇る。CATLは、一般的な急速充電セルに補助バッテリーパックを組み合わせることで性能と走行距離を向上させたとしているが、具体的な技術詳細は明らかにしていない。
BYDもまた、1000V、1000kWのメガワット級充電システムを3月に発表。5分の充電で400kmの走行を実現している。
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韓国・テスラを圧倒する充電速度
中国企業の充電技術は、その速度において他社を圧倒している。現代自動車グループは、E-GMPプラットフォームに基づく800V超急速充電技術を導入しており、IONIQ 5やIONIQ 6などは約18分の充電で388kmの走行が可能だ。テスラのスーパーチャージャーは最大250kW出力で、15分の充電で約320kmの走行距離を提供する。しかし、CATLとBYDが発表した高速充電技術は、これらの速度を3倍以上も上回る。
高速充電技術の実現には課題も山積み
LGエナジーソリューションのキム・ドンミョン社長は、5分充電技術は理論的には可能だとしながらも、急速充電には銅などの素材の使用量が増加し、バッテリー価格の上昇につながるため、コスト管理が重要な課題だと指摘する。また、大徳大学未来自動車学科のイ・ホグン教授は、高出力充電技術の効率性と安全性を確保するには電力供給とインフラ整備が不可欠であり、技術的・制度的な課題は多いと指摘する。
超高速充電インフラ整備のコスト負担
超高速充電器の設置には、新たな電力網の構築など大規模なインフラ工事が必須となる。既存の充電所を活用する場合でも、短時間に大量の電力を消費するため、エネルギー貯蔵装置(ESS)の設置など追加費用が発生する。中国も同様の課題を抱えており、BYDは今後4000カ所の超高速充電所を新設する計画だが、莫大な費用が必要となる。
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韓国バッテリー企業は次世代技術に活路を見出す
EV需要の停滞により、韓国のバッテリー関連企業は赤字に苦しんでいる。SKエレクリンクは売上高が増加した一方で営業損失は拡大し、LGエレクトロニクスはEV充電器事業からの撤退を発表した。こうした状況下で、韓国のバッテリー企業は全固体電池などの次世代技術開発に注力している。全固体電池は、火災や爆発のリスクが低く、エネルギー密度が高いため、高電圧・高出力の実現が可能であり、「夢のバッテリー」と呼ばれている。この技術を先に商用化できれば、市場のゲームチェンジャーとなる可能性がある。