米政権の対日韓関税案に懸念、自動車など品目別緩和は?専門家指摘

米国のトランプ大統領が最近、同盟国である日本と韓国に対し新たな関税措置を示唆したことについて、懸念の声が上がっています。特に自動車などの重要品目に対する関税の行方が不透明である点に注目が集まっています。米通商代表部(USTR)元副代表で、アジアソサエティー政策研究所(ASPI)副会長のウェンディ・カトラー氏は、この動きに対し厳しい見解を示しています。

アジアソサエティー政策研究所副会長ウェンディ・カトラー氏、米国の対日韓関税に関する懸念を表明アジアソサエティー政策研究所副会長ウェンディ・カトラー氏、米国の対日韓関税に関する懸念を表明

米専門家「同盟国への関税引き上げは遺憾」

カトラー氏は、トランプ大統領が米国の最も緊密な同盟国である日本と韓国に対し、25%の相互関税を交渉するという意向を示しながらも、これまでの慣例から外れた行動であると指摘し、「残念である」と表明しました。彼女は、この発表が他の国々にも冷たいメッセージを送るものであり、特に日韓両国が最優先課題としてきた通商拡大法232条に基づく自動車など品目別関税の緩和を米国が受け入れない可能性を示唆していると評価しています。

相互関税と品目別関税は別個の立場

これまで日韓両国は、トランプ政権との通商交渉において、国別の相互関税だけでなく、対米主力輸出品目である自動車と自動車部品に課された25%の関税(通商拡大法232条に基づくもの)を最小化することに集中してきました。しかし、トランプ大統領は両国に送った書簡で、当初7月9日から施行予定だった相互関税を8月1日に延期しました。彼は交渉を通じて相互関税率調整の可能性を示唆しながらも、相互関税は品目別関税とは別個であるという立場を明確にしました。カトラー氏は、この区別が日韓両国が最も懸念する自動車関税などの行方を不透明にしていると見ています。

8月1日までの交渉に突破口の可能性

このような状況は「残念な知らせ」であるとしつつも、カトラー氏は「ゲームが終わったわけではない」と述べています。追加関税の発効日である8月1日までに行われる交渉の中で、まだ突破口を見出す可能性があるとの見通しを示しました。

米国にとって重要な経済協力パートナー

カトラー氏は、韓国と日本が米国にとって極めて重要な経済協力パートナーであることを改めて強調しました。両国はこれまで、経済安全保障に関わる懸案、例えば造船、半導体、核心鉱物、エネルギー協力などの優先順位が高い事案において、米国と緊密に連携してきました。彼女は、両国が米国に提供できるものが多いと指摘しています。さらに、日韓両国の企業がこの数年間、米国に相当な製造業投資を行い、高賃金の雇用を生み出し、米国内の多くの地域社会に恩恵をもたらしている点を挙げました。また、両国は牛肉、豚肉、医療機器、航空機など、様々な米国商品とサービスにとって重要な市場であることも強調しています。

韓国の状況と対話への準備

韓国については、自由貿易協定(FTA)パートナーとして、米国からの輸入品にかかる関税がほぼゼロであるため、高率の関税を課しているインドやベトナムと比較すると、米国に提案できるカードが少ない状況にあると分析しています。また、韓国では新政権が発足したばかりであり、米国との対話に向けた準備にさらに時間が必要であるとの見解を示しました。

結論として、ウェンディ・カトラー氏の見解は、トランプ政権による日韓への関税措置が、両国にとって特に重要な自動車などの品目別関税の緩和に繋がるかどうかが依然として不透明であることへの強い懸念を示しています。しかし、8月1日の発効日までの交渉期間に期待を繋ぐ姿勢も見せています。米国と日韓両国の緊密な経済パートナーシップの重要性が、今後の貿易交渉の行方を左右する鍵となるでしょう。

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