日本の教育を求めて:中国からの移住増加の背景

近年、日本への移住を希望する中国人が増加しています。その大きな理由の一つが「子どもの教育」です。中国では熾烈な受験戦争、高額な教育費、そして卒業後の就職難という厳しい現実があり、将来への不安が広がっています。この記事では、中国から日本へ教育移住する現状と、その背景にある中国の教育事情について探ります。

中国の教育事情:過熱する受験戦争と就職難

中国では、小学校入学前から長時間の学習が当たり前となっています。受験戦争は日本以上に過熱しており、親たちは多額の教育費を投資しています。しかし、その一方で、若年層の失業率は高く、名門大学を卒業しても就職が難しいのが現状です。2022年には、16歳から24歳までの失業率が16.9%に達し、全年代平均の5.4%を大きく上回っています。(参考:中国国家統計局)

中国の塾で学習する生徒たち中国の塾で学習する生徒たち

例えば、国際数学オリンピックに出場経験を持つ優秀な子どもを持つ呉丹さん(仮名、42歳)は、2年間に1000万円を超える教育費を長男に投資していました。しかし、「このまま中国で頑張っても将来が不安」という思いから、2022年に経営・管理ビザを取得し、子どもたちと共に大阪へ移住することを決意しました。

日本の教育への期待:比較的穏やかな競争環境

多くの中国人の親たちは、「日本は中国に比べて競争が厳しくない」と考えています。そのため、日本の進学塾やインターナショナルスクールに子どもを通わせる中国人が増えています。

呉さんの長男は、大阪の私立高校に入学し、現在は東京大学を目指して週4回塾に通っています。呉さんは、「子どもには日本に根を下ろし、良い大学に入ってほしい」と願っています。

教育移住の増加:進学塾にも変化

中国からの教育移住の増加は、日本の教育現場にも変化をもたらしています。大阪市にある個別指導進学塾「アーガス進学会」では、生徒全体の約2割が中国人です。

在留中国人数と18歳以下の割合の推移在留中国人数と18歳以下の割合の推移

2009年の設立当初は日本人だけの塾でしたが、2022年に中国人の母親からの問い合わせをきっかけに、中国人の生徒を受け入れるようになりました。その後、中国のSNS「小紅書(RED)」や口コミで評判が広がり、2023年には中国人専用の教室を新設するに至っています。

日本の教育の魅力:多様性と将来への希望

日本の教育は、詰め込み教育ではなく、個性を尊重し、思考力を育むことを重視しています。このような教育方針は、中国の教育に疑問を持つ親たちの間で高く評価されています。

教育移住は、子どもたちの将来だけでなく、日本の社会にも新たな視点や多様性をもたらす可能性を秘めています。今後、中国からの教育移住はさらに増加していくと予想されます。