2015年鬼怒川水害訴訟:最高裁へ、国と住民の対立深まる

2015年9月、関東・東北地方を襲った記録的な豪雨。記憶に新しい鬼怒川堤防決壊による常総市の甚大な浸水被害。その責任の所在をめぐり、国と住民の攻防が続いています。2月の高裁判決を受け、原告、被告双方とも最高裁へ上告。国と住民の対立は、より深い溝へと進んでいます。

高裁判決:国の責任一部認められるも、住民側の思いは複雑

高裁は、常総市内の二つの氾濫地点のうち、若宮戸地区については国の責任を認め、上三坂地区については賠償責任を認めませんでした。一見、原告側の勝利とも取れる判決ですが、原告代表の片倉一美さんは「気持ちは敗訴」と複雑な胸中を吐露。賠償額の減額もさることながら、国の姿勢に納得いかない様子が伺えます。

alt_1alt_12015年9月、鬼怒川氾濫の様子。茨城県常総市で撮影。(写真:共同通信社)

若宮戸地区の争点:自然堤防の認識をめぐる攻防

争点の一つは、若宮戸地区の自然堤防の扱い。原告側は、国が河川区域に指定しなかったために砂丘林が掘削され、氾濫につながったと主張。一方、国は、当該砂丘林は堤防としての機能を果たしていなかったとして、責任を否定しています。

高橋敏明さんをはじめとする原告住民たちは、国が以前は自然堤防と認めていたにも関わらず、裁判では一転して責任を回避しようとしていると批判。河川管理の瑕疵を認めるべきだと訴えています。 河川法に詳しい専門家、例えば「河川法研究会」代表の山田一郎氏(仮名)も、「河川管理者が自然堤防の重要性を認識していながら適切な措置を怠った場合、その責任は免れない」と指摘しています。

国の責任回避?たらい回しで説明責任を果たさず

国土交通省は、最高裁への上告理由について、関東地方整備局、そして東京法務局へと説明責任を転嫁。東京法務局の担当者も「4月着任のため不明」と回答するなど、たらい回しにする姿勢が見られます。 この対応に、原告側は不信感を募らせているだけでなく、国民からも批判の声が上がっています。 情報公開と説明責任の観点からも、国の対応は疑問視されています。

最高裁の判断は?今後の展望

国と住民の対立は、ついに最高裁へと持ち込まれました。今後の最高裁の判断が、今後の河川管理のあり方、そして住民の安全確保に大きな影響を与えることは間違いありません。 鬼怒川水害の教訓を未来に活かすためにも、真摯な議論と公正な判断が求められています。