韓国の闇:消えた赤ちゃんたちと違法養子縁組の実態

韓国で後を絶たない赤ちゃんの違法売買。少子化が叫ばれる一方で、出生届が出されない「消えた赤ちゃん」が社会問題となっています。その背景には、未婚の母を取り巻く厳しい現実と、伝統的な家族観に縛られる社会の歪みがあります。本記事では、この複雑な問題について深く掘り下げ、解決策を探ります。

未婚の母を追い詰める社会の壁

ソウル市内でベビー服を選ぶ女性(聯合=共同)ソウル市内でベビー服を選ぶ女性(聯合=共同)

韓国社会では、未婚の出産はいまだにタブーとされ、偏見の目にさらされることも少なくありません。未婚の母は経済的な困難や社会的な孤立に直面し、周囲の理解を得られないまま子育てを強いられるケースも。このような状況が、赤ちゃんの人身売買につながる温床となっているのです。ソウル郊外に住むパク・ミヨンさん(仮名・39歳)は、12年前に未婚で長男を出産した際、周囲の目を気にし、しばらくの間、息子の写真をSNSに載せることさえできなかったと言います。

韓国未婚の母家族協会代表のキム・ミンジョン氏(50歳)は、「未婚の出産は家族の理解を得られず、孤立することが多い」と指摘。妊娠中から出産後まで、切れ目のない支援体制の必要性を訴えています。

赤ちゃんブローカーの暗躍

ソウル市内を歩く親子連れ=2025年2月(共同)ソウル市内を歩く親子連れ=2025年2月(共同)

インターネット上には、「妊娠したが誰にも相談できない」「育てる余裕がない」といった未婚の母親たちの悲痛な叫びが溢れています。そこにつけ込むのが、赤ちゃんブローカーの存在です。彼らは巧みな話術で母親たちに近づき、金銭と引き換えに赤ちゃんを買い取ります。

2024年8月、4人の赤ちゃんを売買した罪で、30代の女が懲役5年の実刑判決を受けました。彼女は「人助けで始めた」と主張していましたが、その行為は許されるものではありません。

消えた赤ちゃん:2000人を超える現実

(写真:47NEWS)(写真:47NEWS)

2015年から2022年にかけて、出生届が出されないまま行方が分からなくなった赤ちゃんは2000人を超えています。これは「消えた赤ちゃん」問題として、韓国社会に大きな衝撃を与えました。一部の赤ちゃんは、インターネット上で闇取引されていたことも明らかになっています。

闇取引の背景にあるもの

出産を隠したい未婚の母と、体面を気にして養子を実子に装いたい不妊の夫婦。旧来の家族観に縛られる人々の苦悩が、ブローカーの暗躍を許しているのです。

赤ちゃんポスト:救済か、問題の温床か

赤ちゃんポストがあるソウルのキリスト教会「主の愛共同体」=2022年6月(共同)赤ちゃんポストがあるソウルのキリスト教会「主の愛共同体」=2022年6月(共同)

匿名で赤ちゃんを預けられる「赤ちゃんポスト」は、一定の役割を果たしている一方で、安易な出産放棄を助長する可能性も指摘されています。 真の解決策は、未婚の母への包括的な支援体制の構築と、社会全体の意識改革にあると言えるでしょう。

少子化対策とひとり親支援の矛盾

出生届が出されていない子どもが多くいる問題で、政府に対応を求める市民団体のメンバー=2023年8月、ソウル(聯合=共同)出生届が出されていない子どもが多くいる問題で、政府に対応を求める市民団体のメンバー=2023年8月、ソウル(聯合=共同)

韓国政府は少子化対策に力を入れていますが、ひとり親への支援は十分とは言えません。 出産を奨励する一方で、未婚の母への支援が手薄であるという矛盾が、問題を複雑化させています。

専門家の間では、妊娠期からの経済的支援や、子育て支援の充実、そして社会全体の意識改革が必要不可欠だとの声が上がっています。 子供たちが安全に、そして愛されて育つことができる社会の実現に向けて、更なる取り組みが求められています。