香港で催涙弾と火炎瓶の応酬が激化している。中国への主権返還後、最大規模の衝突だ。まずは流血の回避を含む事態の沈静化が急務である。
香港のトップである林鄭月娥行政長官は大学構内の学生に「投降」を呼びかけたが、それよりも鎮圧を強硬に急ぐ香港警察の過剰な実力行使を戒め、抑制した対応を命じることが先であろう。
香港の弾圧に牙をむく中国の姿勢は、一段と露骨になっている。習近平国家主席は、ブラジルでの国際会議で、香港での抗議を「暴力犯罪行為」と切り捨てた。市民の反発は「一国二制度への重大な挑戦」であるとも述べた。
発言は誤りである。国際公約であった一国二制度を骨抜きにし、香港に強権支配を押しつけているのは中国政府ではないか。
香港を強権が覆い尽くす中で、香港高等法院(高裁)は、デモ参加者の覆面を禁じた「覆面禁止法」は憲法にあたる香港基本法に違反すると判断した。
香港の司法が、独立した立場で良識を示したものである。
だが、この判断に対して全国人民代表大会(全人代)の当局者は真っ向から否定する談話を発表した。基本法の解釈権は、最終的に北京の全人代常務委員会が握る。「法治」に名を借りた露骨な介入は、まさに一国二制度の空文化を示すものだ。
香港の民意が直接反映される区議会議員選挙は、24日に迫っている。香港当局者は抗議活動による混乱を口実に選挙の延期も示唆する。絶対に許してはならない。
中国政府は、この局面の最中に香港警察のトップを事実上更迭し、強硬派で知られる幹部を後任に充てた。中国主導の弾圧がさらに強まることは疑いない。
不当な抑圧に口実を与えないため、抗議を続ける学生らにも賢明な対応が求められる。公共交通の妨害などは控え、選挙を通じて民主派候補を後押しすべきだ。火炎瓶の炎で一般市民の支持を広く得ることはできない。
なによりも、自由と民主を掲げた香港の戦いを見殺しにしないためには国際社会の強い監視の目が必要だ。中国共産党の機関紙「人民日報」は、香港問題への「外部勢力の干渉」に激しく反発している。これこそが、国際社会の対中批判が有効であることの証左ではないか。