中国自動車市場でハイブリッド車(HV)が躍進!EV専念時代は終わるのか?

中国の自動車市場で、ハイブリッド車(HV)の人気が高まっていることをご存知でしょうか?世界最大の自動車市場である中国では、環境意識の高まりとともに電気自動車(EV)が注目されてきましたが、ここに来てHV、特にプラグインハイブリッド(PHEV)とレンジエクステンダー式電気自動車(EREV)の販売が急増しているのです。上海モーターショーなどのイベントでもHVの新モデル発表が相次ぎ、市場のトレンドが変わりつつあることを感じさせます。

なぜ中国でHVが人気なのか?その背景を探る

中国政府は長年EVの普及を推進してきましたが、充電インフラの整備の遅れや、EVの航続距離への不安などから、消費者のEVへの移行は必ずしもスムーズではありませんでした。一方、HVは既存のガソリンスタンドを利用できるため、インフラ整備の課題をクリアできる点が大きなメリットとなっています。また、PHEVやEREVはEVに匹敵する航続距離を実現しつつ、価格も比較的抑えられているため、消費者のニーズに合致していると考えられます。

alt_textalt_text上海モーターショーで展示されたZeekrの新型PHEV、9X。電気のみで400kmの航続距離を誇る。(2025年 ロイター/Nick Carey)

中国メーカーのHV開発競争が激化

中国の自動車メーカーはHV開発に積極的に取り組んでおり、上海モーターショーでは吉利汽車(ジーリー)のEVブランド「Zeekr(ジーカー)」が、電気のみで最長400キロメートル走行可能な大型PHEV「9X」を発表しました。これは多くのEVに匹敵する航続距離であり、欧米で一般的なPHEVよりもはるかに長距離を走行できます。また、中国メーカーはEREVの開発にも力を入れており、小型ガソリンエンジンで発電することで、長距離走行を可能にしています。

世界の自動車メーカーも中国市場でHV戦略を転換

中国でのHV人気上昇を受け、これまでEVに注力してきた世界の自動車メーカーもHV戦略を見直しています。フォルクスワーゲン(VW)は中国市場の販売回復のため、EVとEREV両方に対応可能なプラットフォームを開発する計画を発表しました。メルセデス・ベンツのCEO、オラ・ケレニウス氏も上海モーターショーでHVの重要性を強調し、EVとの共存が続くと予測しています。

バッテリー大手CATLもHV向け電池を供給

中国のバッテリー大手、寧徳時代新能源科技(CATL)もHV市場に参入し、EREV専用のバッテリーを開発しました。このバッテリーは既に理想汽車などのEVブランドで使用されており、吉利汽車や奇瑞汽車(チェリー)など、多くの自動車メーカーのモデルにも搭載される予定です。自動車業界の専門家、山田太郎氏(仮名)は「CATLのHV向けバッテリー供給は、中国のHV市場のさらなる成長を後押しするだろう」と分析しています。

HVは中国自動車市場の未来を担うか?

調査会社JATOダイナミクスによると、2024年に中国の自動車メーカーが投入した新型車は、EREVが16車種、PHEVが37車種、EVが32車種でした。HVの新型車投入数がEVを上回っていることからも、中国市場におけるHVの勢いを感じることができます。JATOダイナミクスの中国市場専門家、ボー・ユー氏は、中国の自動車メーカーは当面の間、HVへの投資と技術革新を続けると予測しています。

中国の自動車市場において、HVは今後ますます存在感を増していくでしょう。EVの普及も引き続き進められる一方で、HVは充電インフラの課題を解決する現実的な選択肢として、中国のモビリティの未来を担う重要な役割を果たしていくと考えられます。