ボルトン元米大統領補佐官の自宅をFBIが捜索、機密情報漏洩の疑い

米連邦捜査局(FBI)は22日、ジョン・ボルトン元米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の自宅と事務所を家宅捜索したと米メディアが報じました。トランプ前政権下で重要な役割を担ったボルトン氏に対する今回の捜査は、政権離脱後の機密情報取り扱い、特に回顧録での違法開示の疑いが持たれており、トランプ前大統領による「政敵」への圧力の一環である可能性が指摘されています。

FBIの捜索と複数の容疑

今回の捜索は、ボルトン氏に対する具体的な容疑が複数浮上している中で行われました。ニューヨーク・タイムズ紙によると、ボルトン氏はトランプ政権を離脱した後、中央情報局(CIA)が海外で収集した情報を不適切に扱った疑いが持たれています。さらに、トランプ政権に打撃を与える目的で機密情報をメディアに漏洩した容疑でも捜査が進められていると報じられています。

CNNテレビは、ボルトン氏が政権離脱後の2020年に出版した回顧録の中で、機密情報を違法に開示した疑いがあると伝えています。これらの報道は、機密情報の取り扱いに関する厳格な法規制に違反した可能性を示唆しており、捜査の焦点となっています。

ボルトン元米大統領補佐官がFBIの家宅捜索後にメリーランド州ベセスダの自宅に戻る様子ボルトン元米大統領補佐官がFBIの家宅捜索後にメリーランド州ベセスダの自宅に戻る様子

トランプ氏の反応と政治的背景

今回のFBIによるボルトン氏の自宅捜索に対し、ドナルド・トランプ前大統領は記者団の取材に応じ、「(捜査の)詳細を聞ける立場にあるが関わらないようにしている」と述べつつも、「(ボルトン氏は)テレビでトランプの悪口を言う時以外は静かな男だ。賢くないし非愛国的なやつだ」と、強い敵意をあらわにしました。また、FBIのパテル長官は22日、自身のX(旧ツイッター)に「法の上に立つ者はいない。FBIは任務に着手している」と投稿し、捜査の正当性を強調しました。

ワシントン・ポスト紙は、今回の事態を「トランプ氏が政敵を狙った最新の事例」と指摘しており、トランプ氏の2期目就任以降、過去に対立した元政権幹部らに対する捜査が相次いで報じられている現状を浮き彫りにしています。これは、トランプ氏が大統領の座に返り咲いて以降、政敵に対する法的・政治的な圧力を強めている兆候と見られています。

ボルトン氏の経歴とトランプ政権との確執

国務次官や国連大使などを歴任したジョン・ボルトン氏は、2018年4月にトランプ政権1期目で大統領補佐官に就任しました。しかし、北朝鮮やイランを巡る外交政策での意見対立を理由に解任され、政権離脱後は回顧録や公の場でトランプ氏の外交手腕を厳しく批判していました。

トランプ氏は今年1月の2期目就任直後、ボルトン氏を大統領警護隊(シークレットサービス)の警護対象から外す措置を取りました。ボルトン氏は過去にイラン当局による暗殺の標的になったことがあり、バイデン前政権が彼に警護をつけていた背景があるため、この措置は物議を醸しました。今回の家宅捜索は、こうしたボルトン氏とトランプ氏の長年にわたる確執の延長線上にあると捉えられています。

まとめ

ボルトン元米大統領補佐官の自宅と事務所に対するFBIの家宅捜索は、機密情報の違法な取り扱い、特に回顧録での開示に関する疑惑を巡るものです。トランプ前大統領からの強い非難や、他の元政権幹部への捜査報道と合わせ、今回の事態はトランプ政権復帰後の政治的対立と圧力の激化を象徴しています。今後の捜査の進展は、米国の政治情勢にさらなる影響を与える可能性があります。