ウクライナ侵攻:ロシア、クルスク州の完全掌握を主張、ウクライナ側は反論

ロシア軍はクルスク州の完全掌握を宣言し、ウクライナ軍最後の拠点であったゴルナル村を奪還したと発表しました。しかし、ウクライナ側はこれを否定し、現在もクルスク州で戦闘を継続していると主張しています。この主張の食い違いは、ウクライナ紛争の複雑さと情報戦の激しさを改めて浮き彫りにしています。

ロシア側の主張と北朝鮮の関与

ロシア軍参謀総長ワレリー・ゲラシモフ氏は、プーチン大統領とのビデオ会議でクルスク州の完全掌握を報告しました。ゲラシモフ氏は、この戦闘でウクライナ側が7万6000人以上の死傷者を出したと主張していますが、この数字は独立機関による検証が行われていません。

注目すべきは、ゲラシモフ氏が北朝鮮軍の「英雄的行動」と「重要な支援」を称賛した点です。ロシアが公式に北朝鮮の軍事関与を認めたのはこれが初めてであり、今後の戦況にどのような影響を与えるのか、国際社会の注目が集まっています。プーチン大統領はウクライナのクルスク侵攻作戦は「完全な失敗」だと断じ、ロシア軍の優位性を強調しました。

altaltプーチン大統領(左)とゲラシモフ参謀総長(画面右)のビデオ会議の様子。緊迫した状況が伝わってくる。

ウクライナ側の反論と戦況の行方

ウクライナ軍参謀本部は、ロシア側の主張を「プロパガンダ」と一蹴し、クルスク州での戦闘継続を主張しています。また、隣接するベルゴロド州への侵攻も続けていると発表しました。ウクライナは昨年8月にクルスク州に侵攻し、ロシア国境に緩衝地帯を築くことで、ロシア軍のウクライナ東部への展開を阻止することを狙っていました。

米戦争研究所(ISW)の報告によると、ロシア軍はクルスク州の国境付近で前進しており、ウクライナ軍を拠点から押し出そうとしています。ベルゴロド州でも戦闘が続いていると報告されており、今後の戦況は予断を許しません。

米ロ首脳会談とウクライナの和平交渉

アメリカとロシアの首脳会談が行われ、トランプ大統領は両国が「合意に非常に近い」と発言しました。しかし、直後にロシア軍によるキーウへの攻撃が行われ、少なくとも12人が死亡、90人が負傷しました。この攻撃は、プーチン大統領の和平への意思に疑問を投げかけるものとなっています。

トランプ大統領は、ローマ教皇フランシスコの葬儀に参列後、ゼレンスキー大統領と会談しました。ホワイトハウスはこの会談を「非常に生産的」と評価し、ゼレンスキー大統領も「歴史的、象徴的な会談」と述べました。

altaltビデオ会議で深刻な表情を見せるプーチン大統領とゲラシモフ参謀総長。ウクライナ情勢の今後の展開が注目される。

和平交渉の行方とウクライナの領土問題

ゼレンスキー大統領は、和平交渉の前に「完全かつ無条件の停戦」を求めています。ウクライナは、和平交渉の際にクルスク州で奪還した領土を交渉材料にしたいと考えていましたが、ロシアが2014年に不法に併合したクリミア半島を含む領土の放棄を要求する可能性が指摘されています。ゼレンスキー大統領は、領土の譲歩は断固として拒否する姿勢を崩していません。

ウクライナ紛争は、複雑な国際情勢と各国の思惑が絡み合い、長期化の様相を呈しています。今後の和平交渉の行方、そしてウクライナの未来は、予断を許さない状況が続いています。