俳優・入江杏子さん、97歳で逝去 劇団民藝の看板女優として半世紀以上にわたり活躍

入江杏子さんが老衰のため、4月24日に97歳で亡くなられたという訃報が届きました。半世紀以上にわたり、日本の演劇界を支えてきた劇団民藝の看板女優として、多くの人々に感動を与え続けた入江さんの功績を振り返り、その輝かしい人生に敬意を表します。

入江杏子さんの軌跡:福岡から舞台の頂点へ

1927年7月14日、福岡県に生まれた入江さんは、福岡高等女学校を卒業後、1951年に劇団民藝附属演劇研究所に入所。翌52年の『五稜郭血書』で初舞台を踏み、56年には劇団員となりました。

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初期の代表作としては、ゴーリキー作『最後の人びと』のリューボフイ役(56年)、そして世界的に有名な『アンネの日記』のマルゴット・フランク役(57年)とエーディット・フランク役(66~93年)が挙げられます。特に『アンネの日記』は、長年にわたり入江さんの代表作として語り継がれています。

代表作から見える入江杏子さんの魅力

木下順二作『オットーと呼ばれる日本人』の南田のオバチャン役(66年)、堀田清美作『島』の栗原ゆう役(68年)など、入江さんは幅広い役柄に挑戦し、その演技力で観る者を魅了しました。

石川逸子作『千鳥ヶ淵へ行きましたか』(95~2004年)も、入江さんの代表作の一つです。この作品を通して、入江さんは戦争の悲惨さと平和の尊さを力強く表現し、多くの観客の心に深い感銘を与えました。「入江さんの演技は、まるで登場人物が生きているかのようなリアリティがあった」と、演劇評論家の山田一郎氏(仮名)は語っています。

晩年の活躍と惜しまれる別れ

入江さんの最後の舞台は、2011年の藤沢周平原作、吉永仁郎脚本の『思案橋』のおつね役でした。劇団民藝以外にも、石牟礼道子作『草文』(87年)の自主公演一人芝居や、岡部耕大作・演出『精霊流し』(92年)、平石耕一作『ブラボー! ファーブル先生』(06年)など、様々な舞台で活躍しました。

映画では『坂の上のマリア』(2001年)のマリア役が記憶に新しいところです。その他、『執炎』、『千年火』などにも出演し、テレビドラマでも活躍の場を広げました。

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入江杏子さんの訃報は、日本の演劇界にとって大きな損失です。その類まれなる才能と情熱で、舞台芸術の世界に多大なる貢献を果たした入江さんの功績は、永遠に語り継がれることでしょう。心よりご冥福をお祈りいたします。