ステーキの香ばしい匂い、ジュージューと音を立てる鉄板、そして一口食べた時の至福の喜び…ステーキは多くの人にとって特別なご馳走です。しかし、近年の原材料価格の高騰は、ステーキ業界に暗い影を落としています。倒産件数は過去最多を更新し、多くの店舗が苦境に立たされています。この記事では、ステーキ業界の現状と、生き残りをかけた戦略について探っていきます。
ステーキ業界の現状:止まらない価格高騰の波
2024年のステーキ店倒産件数は13件と過去最多を記録し、前年比でも増加しています。背景には、輸入牛肉をはじめとする原材料の価格高騰があります。帝国データバンクの推計によると、2024年の輸入牛肉の平均価格は100グラムあたり366円と、コロナ禍前の2019年比で24%も上昇しています。
ステーキ店の倒産が増加傾向
円安に加え、米国産牛肉の生産コスト上昇も価格高騰に拍車をかけています。干ばつによる飼料価格の高騰は、生産者に大きな負担を強いています。さらに、セットメニューに欠かせないサラダや付け合わせの野菜価格も高騰しており、ステーキ店の利益を圧迫しています。ブロッコリーは約2割、ニンジンやジャガイモに至っては約4割も値上がりしています。
ステーキ店の生き残り戦略:価格高騰への挑戦
こうした厳しい状況の中、ステーキ店は生き残りをかけた様々な戦略を模索しています。他の外食産業では、割高な輸入牛肉の代わりに、比較的安価なチキンステーキなどの代替メニューを拡充することで価格を抑える動きが見られます。
ステーキ店の倒産件数推移
しかし、ビーフステーキを求める顧客が多いステーキ店では、代替メニューへの切り替えは容易ではありません。また、もともと他の外食メニューに比べて割高なステーキは、値上げも難しいのが現状です。
新たな牛肉調達ルートの開拓
そこで、注目されているのが牛肉調達ルートの diversification です。米国産より安価なオーストラリア産や、これまで取り扱いの少なかったアルゼンチンなどの南米産牛肉へのシフト、国産牛肉の導入など、割安な牛肉の調達を模索する動きが広がっています。
メニュー構成の見直しと顧客体験の向上
価格戦略だけでなく、メニュー構成の見直しも重要です。顧客のニーズを的確に捉え、魅力的なセットメニューや限定メニューを開発することで、付加価値を高める取り組みが求められます。また、質の高いサービスを提供することで顧客満足度を高め、リピーター獲得につなげることも重要です。「食の安全・安心」への意識の高まりを受け、産地や品質を明確に表示することで、顧客の信頼獲得に努める店舗も増えています。
ステーキの未来:挑戦と進化
ステーキ業界は今、大きな転換期を迎えています。厳しい価格高騰という試練を乗り越えるためには、従来のビジネスモデルにとらわれず、柔軟な発想と大胆な挑戦が不可欠です。新たな調達ルートの開拓、メニュー開発、顧客体験の向上など、様々な取り組みを通して、ステーキ業界は進化を続けていくでしょう。