世界の自動車業界、米関税に揺らぐ中、中国メーカー躍進

米国による自動車関税の影響で、世界の自動車業界が業績見通しを引き下げる中、中国の自動車メーカーが躍進を続けています。本記事では、米関税による世界自動車市場への影響と、中国メーカーの成長戦略について詳しく解説します。

米国自動車関税、世界の自動車業界に打撃

トランプ前大統領が導入した自動車関税が、世界の自動車業界に大きな影を落としています。ゼネラルモーターズ(GM)は関税によるコスト増を見込み、年間純利益見通しを大幅に引き下げました。ポルシェ、メルセデス・ベンツ、ステランティスなども業績見通しの下方修正や撤回を余儀なくされています。

平沢港に止められた輸出用車両平沢港に止められた輸出用車両

市場調査会社S&Pグローバルモビリティは、関税の影響で今年の世界の自動車生産量が前年比2%減となる見通しを発表しました。S&Pグローバルモビリティのアナリスト、クリス・ホブソン氏は、3~4月の販売急増は消費者が値上げ前の駆け込み購入によるものであり、市場の変動性を高めると指摘しています。自動車メーカーは今後、不安定な販売・生産状況への対応を迫られるでしょう。

中国メーカー、低価格EVで世界市場を席巻

米国からの高関税により、米国市場への輸出が事実上閉ざされている中国の自動車メーカーは、低価格の電気自動車(EV)を武器に世界市場での販売を拡大しています。BYDは1-3月期の世界販売台数で現代自動車に迫る勢いを見せており、売上高と純利益も大幅に増加しました。この勢いが続けば、年間販売目標の達成も視野に入ります。

中国メーカーの戦略:新興国市場への集中

中国メーカーの販売戦略は、急成長する新興国市場への集中です。中国自動車流通協会(CADA)によると、1-3月期の中国の自動車輸出は前年比16%増となり、メキシコ、アラブ首長国連邦、ロシア、サウジアラビアなどの新興国が主要な輸出先となっています。エコカーの輸出増加が、この成長を牽引しています。

現代自動車・起亜、北米市場での好調続くも、関税の影響懸念

現代自動車と起亜は、北米市場の需要増加を背景に、米国販売台数を7カ月連続で伸ばしています。しかし、在庫が品薄となる5月末以降、関税の影響が顕在化する可能性があります。現地生産施設の増設計画は進んでいますが、生産開始までは関税の影響を避けられない状況です。

韓国産業研究院のチョ・チョル選任研究委員は、関税による北米市場の需要鈍化が懸念される中、現代自動車・起亜は第三国市場での販売拡大が必要となるが、そこでは中国メーカーとの競争激化は避けられないと指摘しています。

まとめ:世界自動車市場の行方

米国の自動車関税は、世界の自動車業界に大きな変化をもたらしています。中国メーカーは低価格EVを武器に新興国市場を中心に躍進を続ける一方、既存の自動車メーカーは厳しい状況に立たされています。今後の世界自動車市場の行方に注目が集まります。