SNSで話題、フォロワー265万人
性別や国籍を超えた圧巻の“変身メーク”がテレビや交流サイト(SNS)で話題を呼ぶメーキャップクリエーターのGYUTAE(ギュテ)さん(30)。美容技術だけでなく、「全身脱毛症」の過去を明かして活動する前向きな姿勢が幅広い層から人気を集める。症状は今も続いており、脱毛症への社会の理解を求める。本紙の取材に、同じ疾患がある人に向けて「あなたの魅力は髪の毛だけじゃない」と呼びかけた。
【写真複数】「あなたの魅力は髪の毛だけじゃない」と語るGYUTAEさん
ギュテさんはインスタグラムなどのSNSを中心に活動し、総フォロワー数は265万人に上る。
16歳で髪が抜け始めたという。「ただただ不安で、すごく怖かった」。洗髪すると大量の抜け毛が指に絡み付き、風呂場の排水溝にたまる光景におののいた。後頭部のコイン形だった脱毛範囲は、いつしか頭部全体に広がった。
原因は分からず、病院での治療も効果はなかった。外出時にはウィッグなどを使い、周囲に気付かれなかったが、時には「死にたい」との思いを抱いた。22歳で眉毛やまつげも抜けた。
「ないなら描けばいい」
自身を救ったのが、韓国人の男性アイドルの影響で中学時代に始めたメークだった。SNSで紹介した独自のメークが好評を得て自信に。独学で技術を磨き、眉毛は「ないなら描けばいい」、ウィッグも「いろんな色や長さを楽しめていい」と思うようになった。
動画の視聴者に「何で眉毛がないの?」と聞かれることが増え、6年前に脱毛症を公表。同じ当事者からの反応が相次いだ。自分の行動が他者の活力につながることに気付き、脱毛症に関する発信を続けてきた。
脱毛症の当事者には、ウィッグを使って周囲に明かさない人もいれば、ありのままの姿で過ごす人もいる。ギュテさんは「どちらもそれぞれの選択」とした上で「みんなそれぞれ、毛以外の魅力がある。そこに自分の目を向けてほしい。毛がないだけで、したいことを制限する必要はない」と強調する。
「同じはずがない」
脱毛症に限らず、あざなど外見の症状で差別や偏見にさらされる「見た目問題」では、多くの人が感じる「普通」の価値観に苦しみ、生きづらさを覚える当事者が少なくない。
「それぞれ生きてきた経験が違う中で『普通』が同じはずがない。僕にとっては毛がないことが普通。『普通』という価値観が少しでも変わってほしい」
全身に及ぶ症状はそのままだが、今、脱毛症は「治っても治らなくてもいい」と考えている。ギュテさんは「精神的にすごくつらい病気だと身に染みて分かっている。身近な病気で、葛藤を抱える当事者がいることを少しでも知ってほしい」と話した。
(森亮輔)
【円形脱毛症】
毛を生やす組織を免疫が攻撃し、髪や体毛が抜け落ちる「自己免疫疾患」。なぜ免疫が異常な動きをするかは解明されていない。髪が抜ける箇所が円形になる事例だけではなく、複数箇所だったり形が帯状になったりすることもある。重症だと頭部全体や眉毛、まつげなど全身に脱毛が及ぶ。患者数は海外の研究で人口の2%程度とされ、日本に当てはめれば約250万人と推計される。患者の4分の1は15歳以下で発症するという。
西日本新聞